取材・文/池田充枝

上村松園(うえむら・しょうえん)の作品の中で最も人気の高い《序の舞》は、昭和11年(1965)の文展招待展に出品され政府の買い上げとなり、当時の東京美術学校(現東京藝術大学)に収蔵されました。松園みずから「この絵は、私の理想の女性の最高のものと言っていい、自分でも気に入っている女性の姿であります」と語るほど、作者にとって渾身の作であり、また、平成12年(2000)年には国の重要文化財に指定されています。

しかしながら本作は、制作から80年近くが経過し、全体的に本紙と絵具との接着力が低下し、絵具層の粉状化が進行するなど、作品の保存状態に問題が生じてきていました。これ以上の劣化を防ぐため、平成27年(2015)にバンクオブアメリカ・メリルリンチ文化財保護プロジェクトの協力を得て、本格修理を行うこととなりました。修理後は、作品保存の見地から、これまでの掛軸装から額装へと表装変更が行われました。

装いも新たになった《序の舞》の、修理後初公開となる展覧会東西美人画の名作《序の舞》への系譜》が、東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開かれています(~2018年5月6日まで)。

上村松園《序の舞》〔重要文化財 昭和11年(1936) 東京藝術大学蔵〕

 

本展は、このほど修理が完成した《序の舞》の初公開を機に、江戸時代からの風俗画や浮世絵に近代美人画の源流を探りながら、《序の舞》に至る美人画の系譜を辿るとともに、明治中期から昭和戦前期までの、東京と関西における美人画の展開を俯瞰します。

上村松園《母子》〔重要文化財 昭和9年(1934) 東京国立近代美術館蔵〕

本展の見どころを、主催者にうかがいました。

「本展は、《序の舞》にいたる美人画の源流を江戸時代初期の風俗画にまでさかのぼり、歴史的な流れをたどれるよう構成されています。

第1章では松園も影響を受けた江戸時代の浮世絵、西川祐信、三畠上龍、喜多川歌麿などの作品を紹介。第2章、第3章では明治以降に確立していく近代美人画の展開を、《序の舞》が制作された昭和戦前期までたどります。上村松園をはじめ鏑木清方や山川秀峰、菊池契月、北野恒富ら著名作家たちの名品や、松園とともに三園と称せられた島成園、池田蕉園の秀作、知られざる東京美術学校卒業制作の異色作にもご注目ください。

また本展では、音声ガイド機器によるギャラリーツアーを無料でお楽しみいただけます。従来の一点ごとの作品解説に加えて、まるで学芸員が寄り添って一緒に会場を巡りながらガイドしてくれるような、ギャラリー型の音声ガイドです。俳優の竹下景子さんが出演します。」

《舞踊図》六面のうちの一面〔重要美術品 江戸時代(17世紀)サントリー美術館蔵〕展示期間3月31日~4月15日

修復された《序の舞》は、まさに息をのむ美しさ。松園が描いた最高峰の美人に会いに、ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
東西美人画の名作《序の舞》への系譜
会期:2018年3月31日(土)~5月6日(日)
会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(ただし4月30日、5月1日は開館)
http://bijinga2018.jp

本展をより楽しめる、特別講座付きのチケットもある。講師は本展の担当学芸員である、東京藝術大学大学美術館准教授の古田亮氏です

特別講座「《序の舞》美人画の系譜」
日時:4月14日(土)13:00~14:30、
場所:読売新聞東京本社3F、
受講料:2700円(展覧会チケット1枚付)、
お問い合わせ:よみうり大手町スクール事務局(03・3642・4301)

取材・文/池田充枝

 

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