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「七十、八十は鼻たれ小僧、男ざかりは百から百から」(平櫛田中)【漱石と明治人のことば17】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「七十、八十は鼻たれ小僧、男ざかりは百から百から」
--平櫛田中

彫刻家の平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)は長命だった。100 歳を超えてなお、「いまやらねばいつできる。わしがやらねばだれがやる」と、熱い創作意欲を燃やした。

もともとが壮健だったわけではない。親が望むような商人の道を離れ、彫刻の世界で生きていこうと決意したこと自体、20歳過ぎに結核を患ったのがきっかけだった。1年半におよぶ療養生活のなかで、「同じ死ぬなら好きなことをしてやろう」と思い至ったのである。25歳で郷里の岡山から上京。骨の髄にしみるほどの貧窮暮らしを嘗(な)めつつもコツコツと仕事に打ち込み、やがては文化勲章まで受章した。掲出のことばは、その著『人間ざかりは百五歳』より。

平櫛田中の生誕は明治5年(1872)だから、夏目漱石の5歳年下に過ぎないが、没したのは昭和54年(1974)。107 歳の大往生だった。その時なお、自邸の庭には、亡き主の向こう30年分の仕事量に相当する彫刻用の原木が積み残されていたという。

先頃、日本老年学会が、従来、「高齢者」と定義づけられていた年齢を、65歳以上から75歳以上に引き上げるべきだと提言した。昭和31年当時、平均寿命60代(男63.59 歳、女67.54 歳)だったのが現在は80代(男80.79 歳、女87.05 歳)。超高齢社会といわれる日本で65歳は確かにまだ若い。平櫛田中なみとはいかないまでも、妙に老け込むことなく、充実した歩みをつづけていきたいものだ。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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