はじめに-誰袖とはどのような人物だったのか
「誰袖(たがそで)」という名前に、どこか儚い響きを感じる人もいるかもしれません。誰袖は、江戸吉原で名を馳せた花魁であり、当時の贅と虚構、そして政治の渦に巻き込まれたひとりでもありました。
幕臣・土山宗次郎(つちやま・そうじろう)によって莫大な金額で身請けされた誰袖は、華やかな世界の象徴であると同時に、時代の転換点を映す存在でもありました。
そんな誰袖ですが、実際にはどのような人物だったのでしょう。史実をベースに紐解きます。
2025年NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、“疑惑の金”で身請けされた、蔦重を慕う当代一の花魁(演:福原遥)として描かれます。

目次
はじめに-誰袖とはどのような人物だったのか
誰袖が生きた時代
誰袖の生涯と主な出来事
まとめ
誰袖が生きた時代
誰袖が生きた18世紀後半、江戸は町人文化が隆盛を迎えていました。吉原遊郭はその象徴ともいえる華やかな場所であり、多くの花魁たちが文芸や浮世絵のモチーフとなっていました。
一方で、老中・田沼意次が進めていた経済政策、そしてその後の寛政の改革という政治的な動きが、庶民の生活にも徐々に影を落とし始めます。誰袖は、まさにこの揺れ動く時代の只中にいた人物です。
誰袖の生涯と主な出来事
誰袖の生没年は不詳です。残されている資料は少ないですが、できる限り、その生涯を出来事とともに紐解いていきましょう。
吉原を代表する花魁
誰袖は、吉原でも新興勢力として知られた妓楼・大文字屋(だいもんじや)の花魁でした。大文字屋はかつて西河岸に店を構えていたものの、次第に繁盛し、終京町一丁目に転居するほどの隆盛を見せていた店です。
その看板として名を馳せたのが誰袖であり、彼女は呼出しの格式をもつ最上格の花魁でした。新造(しんぞう)や禿(かむろ)を従え、豪華な衣装に身を包んだ彼女の花魁道中は、吉原の名物として人々の目を引いていたことでしょう。
【幕臣・土山宗次郎に身請けされる。次ページに続きます】
