はじめに-勝川春章とはどのような人物だったのか
勝川春章(かつかわ・しゅんしょう)は、江戸時代中期に活躍した浮世絵師で、特に役者絵の分野で革新をもたらした人物です。鳥居派が長年にわたって独占していた役者絵の世界に、新たな写実的な手法を持ち込み、当時の歌舞伎俳優たちを生き生きと描き出しました。さらに、葛飾北斎の師としても知られ、彼の画風の基礎を築いたともいわれています。
そんな勝川春章ですが、実際にはどのような人物だったのでしょう。史実をベースに紐解きます。
2025年NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、葛飾北斎の師匠で、当代一の役者絵師(演:前野朋哉)として描かれます。

目次
はじめに-勝川春章とはどのような人物だったのか
勝川春章が生きた時代
勝川春章の生涯と主な出来事
まとめ
勝川春章が生きた時代
春章が活躍した18世紀後半の江戸時代は、浮世絵が急速に発展した時期でした。この時代には、鈴木春信による錦絵(多色刷り版画)の技法が確立され、美しく華やかな浮世絵が次々と生み出されるようになります。また、歌舞伎が庶民文化の中心として栄え、舞台で活躍する名優たちの姿を捉えた役者絵が人気を博していました。
同時に、美人画や風俗画も発展を遂げ、町人文化の成熟とともに、浮世絵はより洗練された芸術表現へと進化していきました。このような時代背景のもとで、春章は役者絵の新たな表現を追求し、従来の型にはまった絵とは異なる、個性的な描写を生み出しました。
勝川春章の生涯と主な出来事
勝川春章は享保11年(1726)に生まれ、寛政4年(1792)に没しました。その生涯を、出来事とともに紐解いていきましょう。
浮世絵師としての出発
春章は享保11年(1726)に生まれました。宮川春水(みやがわ・しゅんすい)に学び、当初は宮川派に属していましたが、やがて独立。自らの画風を確立して「勝川派」を創設します。
画業初期には「勝宮川」と号していましたが、のちに「勝川」に改めました。
【役者絵の革新者として。次ページに続きます】
