大晦日の吉原「幻の狐舞」

I:さて、ちらっとではありますが、大晦日の吉原の描写で「狐舞」が登場しました。劇中で描かれたように「狐」に扮した人が妓楼に上がりこんで、女郎を追いかけます。当時は、狐に抱きつかれると、女郎が身籠ると伝えられていたそうで、女郎は狐に「おひねり」を渡して抱きつかれるのを回避したそうです。一見、ほほえましい伝統行事ですが、おひねりを出す女郎にとっては、借金返済がそれだけ遅れるともとれます。
A:吉原狐舞は平成25年元旦に吉原神社で70年ぶりに復活したことが話題になりました。平成25年に70年ぶりということは、戦前に幕を閉じたんですね。戦後の混乱とその後の売春防止法制定までの動きで、それどころではなかったのでしょう。
I:今でもイベントなどで披露されていて、かつての「遊郭文化」を伝えているようですね。大晦日に王子で行なわれる狐行列も江戸時代の王子稲荷神社の伝統を復活させたものらしいですね。大晦日と狐、因果があるのかもしれません。そして、ようやく結ばれた蔦重と瀬以ですが、瀬以は吉原を去ることを決断します。いったいなぜなのでしょう。
A:それについての論考は別稿で展開したいと思います(https://serai.jp/hobby/1224630)。
I:さて、次週の第15回は、徳川家基(演・奥智哉)、松平武元(演・石坂浩二)の動向に注目の回です。
A:いろいろな意味で必見の回ですね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
