思いが通じ合ったふたり。(C)NHK

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第9回で印象に残ったのは、大富豪の鳥山検校(演・市原隼人)から身請け話を持ち掛けられた瀬川(演・小芝風花)のことです。瀬川のことを想っているかのようにふるまう蔦重の様子も気になりました。

編集者A(以下A):劇中では、「マブがいなけりゃ女郎は地獄」というフレーズが飛び出しました。それもそうなのですが、マブがいたところでやっぱり地獄は地獄。それが吉原ということが明らかになりました。

I:そうしたことをオブラートに包まずに劇中に挿入してくることについてSNSなどでは「NHKは攻めている」という感想が書き込まれることが多かったりするのですが、私はそうは思いません。吉原を主要な舞台に選んだ以上、避けては通れない描写だと思いますし、「攻めた描写」ではなく「必要不可欠な描写」だと思うのです。

A:吉原の描写をどこまでリアルに近づけるのかというせめぎあいなんでしょうね。両親や祖父母が子供たちといっしょに大河ドラマを視聴する層=ファミリー層が少なからず離反することは織り込み済みと思われますし、脚本の端々にそうした覚悟のようなものがうかがえます。例えば、吉原からの足抜けを目論んだ新之助(演・井之脇海)とうつせみ(演・小野花梨)は捕縛されるのですが、ここから先のやり取りが鮮烈でした。捕縛されて折檻されるうつせみの場面です。足抜けするとこうなるという見せしめ的折檻は、実際にはもっとひどいものだったと思いますが、稲(演・水野美紀)の「人別は? 食い扶持は?」の台詞は、「そうか、女郎は宗門人別改帳から外されているのか」と改めて思い知らされる鮮烈な台詞でした。

I:人別から外されるということは、現代でいえば、戸籍から除外された存在ということになりますね。あまりにもひどいですよね。

A:女郎たちは吉原の外では「人別」から外されましたが、吉原の会所が女郎たちの人別帳を作って管理していたため、「無宿」扱いにはなりませんでした。身請けや年季明けで吉原を出ると、居住する地域の寺の「人別」に入れられます。稲がいっているのは、そういう正当な手続きなしで吉原を出てしまうと、戸籍のない「無宿者」として生きて行かなければならなくなる、ということですね。

うつせみ(演・小野花梨)を折檻する稲(演・水野美紀)。(C)NHK

鳥山検校1400両の身請け。次ページに続きます

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