人生の転機となった友の死

まひろに届いたさわ(演・野村麻純)の訃報に添えられたさわが遺した歌。(C)NHK

I:さて、まひろと仲のよかったさわ(演・野村麻純)の死を知らせる文が、まひろのもとに届きました。さわさんがまひろに会いたいという歌を遺していたようですが、この歌は『紫式部集』に記載のある歌です。

行きめぐりあふを松浦(まつら)の鏡には 誰をかけつつ 祈るとかしる

A:行き巡り逢うのを待つという松浦の鏡、つまり神は、私が誰のことを心にかけつつ祈っているのか知っているのでしょう、といったような意味ですね。さわさんは、父の国司就任に伴い肥前(現佐賀県・長崎県)に下向していました。さわさんには、モデルとなった「筑紫の君」という女性がいました。その名の通り、筑紫(現福岡県)に下向した女性ですね。ちょうど、紫式部が越前にいた頃、筑紫の君も筑紫に行っており、文を交わしていたようです。

I:ドラマではさわさんがまひろをお姉さんのように慕っていますが、紫式部は自身の亡くなった姉(劇中未登場)の代わりとして、筑紫の君のことを姉と慕っていたのですよね。

A:歌の中で「鏡」と詠まれているのは佐賀県唐津市に鎮座する鏡神社のことですね。紫式部も『源氏物語』の第22帖「玉鬘」でもこの鏡神社のことに触れています。遠く離れた都でも名高い神社だったのですね。

I:唐津には唐津焼の取材で訪れたことがありますが、鏡神社には参拝できませんでした。せっかくですからこれを機にお参りしたいと思います。さわさんとまひろ、筑紫の君と紫式部のことに思いを馳せながら。

A:親しい人が亡くなったり、大病した時が、わりと人生の転機になったりしますね。まひろにとってさわさんの訃報がまさに転機になった感じです。しかし、都に戻って、宣孝の妻になるという選択だけでおさまるのかどうか……。

I:道長との恋の行方にも要注目ですね。

まひろが宣孝(演・佐々木蔵之介)や周明から言い寄られている頃、都の道長は……。(C)NHK

※『小右記』の引用は国際日本文化研究センター『摂関期古記録データベース』より

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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