編集者A(以下A):『光る君へ』第24回では、長徳の変の罰として、大宰府と出雲にそれぞれ左遷されていた伊周(大宰府/演・三浦翔平)、隆家(出雲/演・竜星涼)の兄弟の罪を赦し、京へ召還することが決められました。その際に出雲から超速で戻って来たのが藤原隆家。例によって藤原実資(演・秋山竜次)がブツブツいっていましたが、これもまた史実のようです。
ライターI(以下I):召還が決まったことを事前に誰かが漏らしていたとしか思えないという疑惑があったということですよね。
A:時系列を整理してみましょう。東三条院詮子(演・吉田羊)の病気平癒のために大赦が行なわれたのは3月25日。伊周、隆家兄弟を都に召還していいかどうかの陣定(じんのさだめ)が行なわれたのは4月5日です。そして隆家が京に戻って来たのは5月21日。
I:劇中でも「出雲から空でも飛んで来たのか?」「普通なら20日はかかろう」と言われていました。時代考証の倉本一宏先生の『藤原伊周・隆家 禍福は糾へる纏のごとし』(ミネルヴァ日本評伝選)には「都から別使が遣わされ、それを承けて隆家が上京の準備を行ない、それから日を勘申して出立し、都に入ることを考えると、五月二十一日の入京というのは、いかにも早すぎるという感は拭えない」と記されています。
A:陣定の前に召還が決まっていて、誰かがフライングして知らせていたという疑惑ですよね。こういう風にドラマ化されると、ついつい「もしや隆家は最初から反伊周陣営=道長に通じていたのでは?」という風に思ったりもします。道長(演・柄本佑)が、伊周追い落としのために隆家を味方にしていたのではないかと……。
I:京への召還が決まったことが事前に漏れていたとすると荒唐無稽な説とも言い切れないですね(笑)。もちろんエンタメ目線での感覚になりますが、この先の伊周と隆家の人生、そしてふたりの子孫の行く末のことを考えると、さらに疑惑が広がるのが怖いですね。
A:道長も問いかけていましたが、隆家は花山法皇(演・本郷奏多)に矢を射かけた張本人。にもかかわらず、兄の伊周と比較した場合、事件後の扱いにやや不可思議な対応があるのは否めません。
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