まひろに求婚する道長
I:前週に月明かりの照らす廃邸で初めて結ばれたまひろと道長ですが、今週も恋路一直線という雰囲気でした。今週も熱い抱擁と濃厚な「口吸い」場面が描かれました。
A:まひろが汗をかきながら野菜を洗う姿を見て、強烈にいじらしく感じたのでしょう。そんな雰囲気を感じました。
I:パッションという感じですかね。ここで道長は「妻になってくれ」と求婚します。まひろは、「北の方(正室)にしてくれるの?」と問いますが、道長の意向は「妾(しょう)」ならばということでした。
A:道長は、「北の方は無理だ」とはっきりときっぱりと断ります。現代的な感覚では「都合のいい関係でいてくれ」と言っているようなものですが、まひろも拒絶します。それに対して道長は「勝手なことばかり申すな」と切れ気味に台詞を発して立ち去ってしまいます。
I:私はこの場面を見て、直秀(演・毎熊克哉)が第5回で発した「帰るのかよ」という言葉がぐるぐる頭を回りましたよ。「道長、また帰っちゃうの?」って。
A:さて、ここでまひろが道長の正室になる可能性がなかったのか考えてみました。父の兼家の正室時姫(演・三石琴乃)の父藤原中正(なかまさ)は、藤原北家でもかなり以前に枝分かれした魚名流、摂津守を務めた受領層です。まひろの実家も藤原北家で為時の祖父兼輔は権大納言まで務めています。ですから為時がうまく兼家とつながっていたら、北の方になれる可能性がなかったわけではないような気がします。
I:兼家のもうひとりの妻寧子(演・財前直見)の出自もまひろの実家とそんなに変わらないような気もするのですよね。でもこの時まひろの父為時は官職を解かれ、無職の身。これではなかなか正室とするわけにはいかないと思います。
A:道長は自身の結婚が自分の思い通りにならないことをわかっているんですよね。父兼家が摂政になって、その体制を盤石とするため、まだ独身の道長に賜姓源氏の姫との縁談を仕組んでいるわけですね。すでに父の源高明(醍醐天皇皇子)が亡くなっていた明子(演・瀧内公美)はともかく、源雅信(宇多天皇孫/演・益岡徹)の娘倫子は天皇に入内可能な「后がね」。父や兄弟の正室よりも高位な妻を迎えようとしていたのが道長、というタイミングの悪さもあったのでしょう。
I:いずれにしても「恋の四者模様」の展開が楽しみです。さて、今週の「倫子サロン」では『古今和歌集』の「君や来む我や行かむの十六夜に まきの板戸もささず寝にけり」を詠んでいました。「恋しいあなたは来てくれるのでしょうか。それとも私が行くべきですか? そんなこんなで迷っていたら十六夜の月が見えてきて、私は扉も閉めることなく眠ってしまいました」という恋の歌。明らかに道長を意識しています。可憐といえば可憐。いじらしいといえばいじらしく、この恋がなんとか成就してほしいと思わされます(笑)。
A:まひろも応援したいけど、倫子も応援したいという気持ちにさせられるということですか? 結果がわかっているのに、ハラハラさせられるは、脚本の妙ですね。
【左利きの吉高さんが右手で習う書道。次ページに続きます】