ライターI(以下I):『光る君へ』第11回では、円融天皇(演・坂東巳之助)と藤原詮子(演・吉田羊)との間に生まれた懐仁親王(演・高木波瑠)が即位することになりました。一条天皇です。
編集者A(以下A):本編では、即位式直前に発生した事件の顛末が描かれます。高御座(たかみくら)に血塗られた「何か」が置かれていたというものです。劇中では道長の機転で「何事もなかった」ことにして処理されます。穢れ(けがれ)をもっとも忌避する貴族社会において、もっとも厳粛な空間である高御座が、死穢に染められたという衝撃的な場面です。
I:なんという衝撃的な展開でしょう。いったい誰の仕業なのでしょう。
A:この場面はドラマのフィクションではありません。元ネタが歴史物語『大鏡』に「高御座のうちに、髪つきたるものの頭の、血うちつきたるを、見つけたりける(訳:高御座の内に、髪の毛の生えた、何か得体のしれないものの頭で、しかも血のついているものを見つけた)」と書かれています。つまり誰かの生首が置かれていたというものです。
I:ものすごい事件ですね。
A:『大鏡』では、そのことを兼家に報告したところ、兼家は眠っている様子なので、もう一度同じことを繰り返して伝えたそうです。それでも兼家は、眠り込んで返事がない。最終的には、「聞かなったことにして済まそうと思っているのだな」と察した報告者によって、何もなかったこととして処理されたというふうに書かれています。
I:「聞かなかった=何もなかった」とはあまりにも狡猾な処理方法。こういう悪知恵って引き継がれるものですよね。きっと現代政治にも受け継がれているのかもしれないですね(笑)。
【映画『ゴッドファーザー』より『大鏡』の方が元祖。次ページに続きます】