身体をはって藤原家の陰謀をしかけていく道兼(右/演・玉置玲央)。(C)NHK

ライターI(以下I):花山天皇(演・本郷奏多)が即位して、側近の藤原義懐(演・高橋光臣)の権勢が増していきます。その権勢が積み上がっていく前に、なんとか追い落としたいと考えたのが藤原兼家(演・段田安則)。前週から何やらきな臭い雰囲気が漂って来ています。

編集者A(以下A):陰陽師の安倍晴明(演・ユースケ・サンタマリア)をも巻き込んで壮大なる謀(はかりごと)がめぐらされる様相を呈しています。本作では、毒を盛ったり、呪詛をしたり、流言を撒いたり、権力を得るために権謀術数を弄する様子が頻繫に描かれますが、今回の陰謀は規模が異なりますね。

I:源倫子(演・黒木華)のサロンの「陽」との対比が鮮烈でドギマギします。

A:権力者による権謀術数の数々を見ていると、ふと、現代でも同じような謀がめぐらされているのではなかろうかと思わされます。権力者がメディアを通じて観測気球をあげることは序の口で、流言飛語の類はSNSの進展で、何が正しい情報なのか判別しがたい事態になることもあります。さすがに毒を盛ったり、呪詛をしたりするといったことはないかと思いますが、そういうことをつい考えてしまいました。

I:毒はともかく、呪詛は今でもあるかもしれないですよ。反対勢力の組織が瓦解するようにと個人的に神社仏閣に祈願するというのは、今もありますし。丑の刻参りは有名ですよね。

A:丑の刻ですから午前1時~3時、真夜中にお参りして呪詛する一種の信仰ですよね。ネットで検索すると、藁人形キットが売られていますから、それなりに需要があるのかと、慄然とします。

I:意外に「現代の呪詛」、あるのかもしれないですね。

安倍晴明の陰謀加担

I:そして、前週から始まった藤原兼家一族による「壮大なる陰謀」の輪郭がくっきりとしてきました。衝撃なのは安倍晴明が完全に陰謀の片棒を担っていたことです。外堀が埋められて、徐々に内堀も埋められつつある様子が描かれました。それにしても陰陽師の安倍晴明が、ここまで謀を牽引するとは衝撃的な展開です。

A:行事などの吉日を卜占する重要な役割を担っていたのが陰陽師。その陰陽師が陰謀に加担していたという設定は衝撃的ではありますが、現代的な感覚でよくよく考えれば「そういうのありかも」というふうに考えさせられます。陰陽師や寄坐(よりまし)の人々も権力に寄り添って遊泳しなければなりませんから、そのあたりは臨機応変にこなしていたのかな、と思います。

I:それにしても、安倍晴明が花山帝に出家を勧める場面は凄みがありましたね。さすがに陰陽師から出家しか道はないと説かれると、まだ年若い帝は抗弁する術を持たなかったのでしょう。

A:一連の政変は「寛和の変」と記録されることになるわけですが、大河ドラマで描かれるのは初になります。いったいどのような演出になるのか。大河史に刻まれる回になるのかどうか、注視したいと思います。

I:劇中では藤原兼家一族総出の趣でした。

A:特筆すべきは、実娘の詮子(演・吉田羊)までぎりぎりまで騙し通したことですね。「謀(はかりごと)は密なるを以て良しとす」といわれますが、身内にまで悟られることなく進めるというのは鉄則といえば鉄則。

I:兼家が目を覚ました瞬間の詮子の叫び声が尋常ではありませんでした。ここ、密かに「大河史の名場面」になったのかなとニヤニヤしています(笑)。

突然目を開けた兼家(演・段田安則)に驚いて悲鳴を上げる詮子(演・吉田羊)。(C)NHK

実資の日記。次ページに続きます

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