まひろが舞った五節舞は「令和の即位」でも舞われていた。そして源倫子が抱いていたキジシロの猫が気になる！【光る君へ 満喫リポート】４

女性好き花山天皇

Ｉ：師貞親王が即位しました。恭しく三種の神器が新帝のもとに運ばれていましたが、劇中では、新帝の過剰なまでの女性好きの様子が今週も描かれました。藤原斉信（演・金田哲）の妹忯子（よしこ／演・井上咲楽）が入内します。天皇に手を縛られる場面が挿入されましたが、艶めかしい描写で、けっこう攻め込んでくるなと思って見ていました。天皇はこの忯子を深く寵愛していたことが知られています。

Ａ：確かに艶めかしいといえばその通りなのですが、あのあと新帝も自らの手にもあの紐を結んでいたかもしれません。そうなると見方が変わってきます（笑）。

Ｉ：ただ、即位の際に、高御座で女官と性行為をしたことも会話の中で語られましたからね。このエピソードは『古事談』『江談抄』といった書物に記されているものです。この際のお相手の女官の名は、文徳源氏の源時明の娘・馬内侍（うまのないし）ということが伝わっています。この馬内侍という女性はこのほか複数の貴族と関係があったといいますね。

Ａ：高御座での行為は「本当かな？」と思うのですが、ある母と娘に皇子を生ませたというエピソードは実際に皇子の名前が記録されていますから（昭登親王、清仁親王）、やはり相当型破りな天皇だったのでしょう。その花山天皇を見事に演じているのが本郷奏多さん。なかなかここまではまるキャスティングはないのではないでしょうか。

Ｉ：その花山新帝に側近になるように指示されたのにもかかわらず「辞退します」と断り続けたのが藤原実資（演・秋山竜次）。この場面は実資の処世術の巧みさを描いた場面かと思われます。彼は最終盤まで登場してくるでしょうから、注目の人物。秋山さんの演技にも注目です。

Ａ：さて、その場で新帝の側近として登場したのが、藤原義懐（よしかね／演・高橋光臣）と藤原惟成（これしげ／演・吉田亮）です。義懐は、藤原兼家の兄伊尹（これただ）の五男で道長の従兄弟。花山天皇の母が義懐の姉という関係なのです（伊尹はすでに死没）。一方の藤原惟成は花山天皇の乳母子という関係です。惟成は藤原北家全盛の中で藤原南家です。

Ｉ：乳母子というと一昨年の『鎌倉殿の13人』では、源頼朝の乳母の子である比企能員などが重用される様子が描かれました。やはり乳母の子といえば「乳兄弟」のようなものですからね。

Ａ：ということで、また藤原姓の登場人物が増えました。多くの藤原姓の人間が虎視眈々と権勢の座を狙っていたということですし、子だくさんの天皇の皇子から臣籍降下した「源氏」あるいは「平氏（兼家の家司を務めている平惟仲など）」など多くの人々が官職を求めていたという時代背景は押さえておきたいですね。

Ｉ：まひろの父為時（演・岸谷五朗）がなかなか官職にありつけなかったのは、子だくさんの天皇の皇子などに官職を与えるためにあぶれた人が多かったのかな？　とも思ったりしますね。藤原兼家も兄弟が多いですし……。

まひろの父為時の任官

Ｉ：ということで、まひろの父藤原為時が師貞親王の即位により晴れて任官しました。長く不遇の時代を経て「復活」を果たしたことになります。

Ａ：劇中貧しいことが強調されましたが、為時の祖父兼輔は中納言という身分にまで上り詰めた人物にして、三十六歌仙のひとりです。それが孫の代に零落してしまうのはなぜなのか。兼輔は娘の桑子を醍醐天皇に入内させて、桑子は章明親王を産んでいますが、醍醐天皇には子女がたくさんおり、皇位を継いだのは藤原基経の娘穏子が産んだ皇子たち（朱雀天皇、村上天皇）でした。結果、兼輔の栄華は一代限りで、公卿になれたのも兼輔ただひとり。子や孫らはみな、受領身分の中流貴族ですが、為時に至っては10年も官職につけないありさまだったのです。

Ｉ：落ちぶれ貴族で、お父さんがリストラされて家が貧乏だけど、頭が良くて自ら道を開いた紫式部。改めて、ドラマのヒロインにぴったりじゃないですか。

【令和の即位後の大嘗祭でも舞われた「五節舞」。次ページに続きます】