いろいろな意味で期待大の2024年大河ドラマ『光る君へ』。吉高由里子さん扮する紫式部と柄本佑さん演じる藤原道長の物語だ。(C)NHK

編集者A(以下A):前回、徳川家康が主人公になった大河ドラマは昭和58年(1983)の『徳川家康』ですが、大河ドラマはその翌年の昭和59年から『山河燃ゆ』『春の波濤』『いのち』と三作連続で近現代大河に移行しました。当初は5~6作を予定していたそうですが、昭和62年(1987)に従来の路線に戻されたのが『独眼竜政宗』。平均視聴率39・7パーセントは、今も歴代大河ドラマナンバー1です。「歴史は繰り返す」と言いますが、『どうする家康』以降の大河ドラマも、平安時代中期の紫式部が主人公の『光る君へ』、江戸時代中期の出版人蔦屋重三郎が主人公の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』と、従来の戦国・幕末路線から脱する形になっています。

ライターI(以下I):この路線が何年続くのかとても興味深いですね。

A:40年前の「路線変更」については、数々の大河ドラマの演出を担当した大原誠氏の著書『NHK大河ドラマの歳月』(日本放送協会出版)や『大河ドラマの50年』(鈴木嘉一著 中央公論新社)などの書籍でその経緯が語られています。発端は昭和52年にさかのぼります。2年後の大河ドラマ(『草燃える』)の担当(ディレクター)に決まった大原誠氏は、プロデューサーの斉藤暁氏とともに番組制作局長の川口幹夫氏、ドラマ部部長の広江均氏、担当部長の遠藤利夫との五者協議に臨んだといいます。

I:私もその大原さんの本は読みましたが、〈すでに数年前から大河ドラマはその役目を終わったのではないか〉〈もはや歴史的時代を描く素材はやりつくしてしまったのではないか〉〈のたれ死にする前に終息すべきではないか〉などと議論されたことが綴られています。

A:近現代路線を5~6作やって、大河ドラマの歴史にピリオドを打とうという議論もあったそうです。大原誠さんはこう書いています。〈しかし、大河ドラマを終息させたとき、それに代わり、NHKの看板番組たり得るものがあるか。結局、会談の結論は近現代路線への転換は検討するにしても、そこへの突入は時期尚早ということになり、大転換を図った『黄金の日日』の路線を継承しながら企画を考えることで一致しました〉。この時の議論が昭和58年の『徳川家康』の翌年から始まった近現代路線の3作品につながるわけですね。

I:昭和50年代前半にすでに「大河ドラマ終息論」が議論されていたことは驚きです。昭和52年といえば、大河ドラマ15作目の『花神』が放映されていた頃になります。

A:昭和52年に議論された近現代大河路線は、昭和59年の『山河燃ゆ』で実現します。当初5~6作が想定された「近現代大河」ですが、実際には3作で終了し、昭和62年(1987)以降、『独眼竜政宗』『武田信玄』『春日局』と戦国を題材にし3作が高視聴率を獲得するという流れになります。一連の流れに関与していたのが、前述の昭和52年の五者協議に参加していた方々だというのが興味深いところです。放送総局副局長に昇進していた遠藤利夫氏、放送総局長に昇進していた川口幹夫氏らが近現代大河路線を推進しますが、現場から「やはり大河は時代劇」という声があがった際、柔軟に対応します。ちなみに川口氏は後にNHK会長職まで昇りつめ、前任会長が考えていた「紅白歌合戦終息」をおしとどめたことでも知られています。

大河ドラマの路線は変更されたのか? 次ページに続きます

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