頼朝と御所の侍女との間に生まれた貞暁
『鎌倉殿の13人』第43回では、源実朝の後継者として親王を迎えるために、北条政子(演・小池栄子)が上洛して、藤原兼子(演・シルビア・グラブ)と面会するシーンが描かれた。
鎌倉では、非業の死を遂げた源頼家(演・金子大地)の子息公暁(こうぎょう/演・寛一郎)が鎌倉殿の座を狙い、頼朝の弟全成(演・新納慎也)の息子時元(演・森優作)が、実母で北条政子の妹でもある実衣(演・宮澤エマ)によって、鎌倉殿の後継者に擬せられようとしていた。
そうした中――。
劇中では描かれなかったが、実は建保6年(1218)の上洛の際に、政子は熊野詣でも行ない、さらには高野山を訪れていた。
夫の源頼朝は落馬事故で命を落とし、長女の大姫、次女の三幡はいずれも若くして亡くなった。さらに、誕生した際には御家人たちに喝采を浴びた嫡男頼家も自らの実家北条家によって惨殺されるなど、家族関係では、政子は、不幸を絵に描いたような生涯を送っていた。
この上洛の段階で、実朝はまだ健在だったものの、熊野に詣でていることから、今は亡き身内の菩提を弔うための旅だったものと推察される。
かつては忌み嫌っていた男子との対面
そして、政子は密かに高野山を訪れ、ある人物と対面していた。
その人の名は、貞暁(じょうぎょう)。亡き頼朝の忘れ形見の男子で、齢7歳で京の仁和寺に入室した人物である。頼朝、政子の次女である三幡と同じ文治2年(1186)に誕生した貞暁はこの時32歳。修行先を仁和寺から高野山へと変えた後も、初代鎌倉殿頼朝所生の男子として一目置かれる存在だった。
当時の高野山は、女人禁制であったため、政子が訪れたのは、高野山への道中にある丹生都比売(にゅうつひめ)神社だ。
頼朝と御所の侍女との間に生まれた貞暁のことを政子が徹底的に忌み嫌っていたことは、以前に記事にまとめた(https://serai.jp/hobby/1086204)。鎌倉殿頼朝の男子(出生の段階では次男)として生まれながら、政子を憚って誕生を祝う儀式も行なわれず、本来であれば有力御家人が乳母になってもおかしくない立場でありながら、7歳で京に行くまで政子の目に触れないよう、爪に火をともすように生きてきた男子である。
【鎌倉殿の後継者として遜色のない立場にあった貞暁。次ページに続きます】