創立150年を迎える東京国立博物館は、日本で最も長い歴史を誇る博物館。数多くの美術品を収蔵する東京国立博物館の中でも、質量ともに最も充実しているのが絵画。そこで、世界に誇る国宝名画を紹介します。
長谷川等伯『松林図屏風』
成り上がり者と呼ばれた等伯がひとり辿り着いた孤高の境地
勢いのある筆の動きと墨の濃淡だけで松林を漂う靄(もや)と、大気に包まれた光の世界を、時間の移ろいとともに見事に表現した一作。
描いたのは長谷川等伯(はせがわとうはく)。30歳を過ぎてから生まれ故郷の能登(のと)・七尾(ななお)を出て都に上った等伯は、天下人のお眼鏡に適って数々の壮麗なる金碧画(きんぺきが)を描き出し、瞬く間に桃山画壇の覇者・狩野(かのう)派を脅かすほどの成功を収めた絵師である。
そんな彼の前にひとりの作家が立ちはだかる。牧谿(もつけい)だった。中国・南宋(なんそう)時代の画僧が水墨によって紡ぎ出す精妙で洒脱(しゃだつ)な自然描写に衝撃を受けたのだ。等伯は牧谿の筆技を完全に体得するまで、いくつもの模写を手がけている。
そして結実した作品が、中国生まれの水墨画の技法と日本の情緒が見事に融合した本作なのだ。等伯が50歳代でついに到達したひとつの境地であり、本作は日本の水墨画のひとつの極みである。
樹木の描き方は一見、牧谿に倣(なら)っているようにも見えるが、松葉を近くで見ると、驚くべき速さで筆を走らせ、激しく荒々しいタッチで描き出していることがわかる。
実はこの作品に捺(お)された印は後世のものであり、紙の継ぎ目がずれているので完成作ではないという説が有力である。恐らくは襖絵(ふすまえ)の下図だったものがあまりに完成度が高く素晴らしかったため、後世の人間が屏風(びょうぶ)に仕立て直して印を捺したのではないかと考えられている。しかし、そんな曰くが些事(さじ)に感じられるほど、孤高の存在感を放つ傑作だといえるだろう。
「サライ美術館」×「東京国立博物館」限定通信販売
風雅な高級紙製ランチョンマットを10枚セットでご用意した。商品は、今回の特別展で公開される「国宝」の中から『サライ』が厳選した作品を用いた全3種類。どの商品も東京国立博物館から提供された公式画像データを、原画の
魅力を損なわないようランチョンマットに適した形にリデザイン。それを大日本印刷の技術を用いて再現性を高め、受注を受けるごと丁寧に印刷している。
用紙は、上品でしなやかな風合いの「タント紙」。上質さを求められる写真集や名鑑などに用いられている紙で、高級感あふれる仕上がりになっている。まさにハレの日や特別な日の宴には恰好の品。食卓や折敷(おしき)に敷くだけで料理に華やぎを添えられる。