ライターI(以下I):冒頭で義時(演・小栗旬)がたったひとり双六盤の前に座っていました。
編集者A(以下A):前週、鎌倉殿実朝(演・柿澤勇人)が和田義盛(演・横田栄司)を双六に誘う場面があった流れで、ラストシーンでも双六盤に向きあう義時が登場しましたが、一瞬とはいえ、「義時の孤独」を表す場面でした。
I:『吾妻鏡』では、和田合戦前後の義時は囲碁をしていたそうです。でも本作では、上総広常(演・佐藤浩市)の最期や、北条時政(演・坂東彌十郎)が上洛した際に後白河院(演・西田敏行)と双六に興じる場面が登場するなど、双六が効果的に使われていますね。
A:なんだか当時の双六遊びをしてみたくなりますよね。当時はどんなものを賭けていたのでしょうか。
I:さて、義時の思いがどこにあったかは窺い知れませんが、行き違いも重なって、事態は緊迫。ついに和田と北条の合戦は不可避の状況になってきました。ここで和田義盛と息子である朝比奈義秀(演・栄信)とのやり取りがなんだか胸に沁み入るものになりました。
A:義秀はじめ息子たちが〈北条を信じるな、父上!〉と口々に叫びます。ここで義盛が発した〈我らの敵はあくまで北条。この戦、鎌倉殿に弓引くものではない〉という台詞が肝なんでしょう。敵は北条。この場合、明らかに義時のことをさしています。
I:私は鎌倉武士の中でも以前から和田義盛のファンでした。横田栄司さんの義盛は私が思い描いていた義盛に近いキャラクターでした。それでも、義盛と義村(演・山本耕史)とのやり取りだけは理解できませんでした。だって、義村を味方に引き入れたら、対北条では互角かそれ以上の戦いができたんですから。もっと強引に味方に引きこまないと。このシーンだけはちょっとイライラして見てしまいました。
A:ほんとうにそうです。〈お前と小四郎とは幼いころからの仲だ〉と義盛に語らせていました。「そんなに物わかりのいい態度でいいのか義盛!」と思う気持ちはよくわかります。しかし、なぜ義村は徹頭徹尾、義時に味方し続けたのか。そしてその結果、三浦一族には何らかのメリットがあったのか……ミステリーです。当欄37で「宝治合戦までもやってほしい」といったのはその答えに少しでも近づきたいと思ったからです。
I:あまり賛同者はいなかったようですが(笑)。
A:尺の問題がありますから、しょうがないです。ただ、義村は、〈俺を信じるか信じないかはそっちの勝手だ。俺を信じてお前は死ぬかもしれないし、信じて助かるかもしれない。だが、俺を信じなければお前は間違いなく死ぬ〉とか、わかったようなわからないような台詞を吐く人間ですよ? どこに真意があるのかさっぱりわからない(笑)。
【義盛と巴のやり取りに涙が止まらない。次ページに続きます】