文/鈴木拓也

中学の時、ダンスの魅力に目覚めて以来、プロのダンサー一筋で活躍してきたSAM(サム)さん。

還暦を迎えた今も、ダンスクリエイターとして精力的に活動している。
ステージ上での軽快な動きに、衰えは微塵も感じさせないが、そんなSAMさんでも、40代終盤で「瞬発力やキレがガクンと落ち」、年齢を感じたという。

それまでは、食事も飲酒もほとんど制限せず「今が楽しければいい」と過ごしてきたが、このときから真剣に自分の身体と向き合うようになったそうだ。

SAMさんが、「ジェロントロジー」なる学問を知ったのはその頃。日本では加齢学とよばれ、加齢に伴う心身の変化を主に研究する。
興味を持ったSAMさんは、南カリフォルニア大学デイビススクールの通信課程でジェロントロジーを学ぶ。ちょうど、「ダレデモダンス」という、既往症を持つシニアの人向けのダンスプログラムを開発していたこともあり、乾いた砂が水を吸うようにジェロントロジーの世界に分け入った。

その甲斐あって、「60歳になったいまが一番、心も体も自分史上最高」へと到達したSAMさんが上梓したのが、書籍『いつまでも動ける。 年をとることを科学するジェロントロジー』(クロスメディア・パブリッシング)だ。

1日3分のラジオ体操でもいい

本書でSAMさんが語るのは、シニアと呼ばれる年代になっても、快活であり続けるための知識・実践がメイン。実践とは、「運動」、「食事」、「睡眠」の三本柱、そして「コミュニティ」を指す。
「運動」に関していえば、ご本人は、さすが現役のダンサーだけあって、「運動漬けの毎日」を送る。朝は犬の散歩がてら3~4kmのウォーキングを行い、その後はダンススタジオでリズムトレーニングや筋トレをこなす。腕立て伏せだけでも、体勢を変えながら100回以上行うなど結構ハード。

しかし、運動習慣のない人が、最初からこのレベルを目指すことは求めてはいない。SAMさんの最初のアドバイスは、「1日1回でもいいので、まず体を動かしてみてください」だ。そして、ほとんど運動はしていなかった、50代の知人の話を引き合いに出している。

あるとき、お風呂場で、お湯が溜まるまでの時間に5回だけ壁プッシュという筋トレを始めたそうです。しばらくは5回やるだけで精一杯だったのですが、毎日続けていくうちに余裕が生まれました。余裕が出てくると、次は10回、20回……と自然に回数が増えていき、だんだん体が強くなるのを実感したというのです。50代でも体が成長していくことの嬉しさで欲が出て、その後、本格的なトレーニングを始めたそうです。(本書より)

運動は、1日3分のラジオ体操でもいい。これでも「しっかりやると、かなりの運動になります」と言うとおり、忙しくても何かしら始めるのが重要だとも。

また、より具体的なエクササイズとして、SAMさんは3種類の股関節トレーニングを挙げている。

腕や脚ではなくて「股関節」。ちょっと意外に感じるが、SAMさんによれば、股関節とそれに付随する筋肉を鍛えることで、姿勢や動きが改善でき、腰痛や膝の痛みなど、身体の不調にも改善効果があるという。
では、そのトレーニングの1つを紹介しよう。

1. 椅子を用意して、浅めに座り、両腕は胸でクロスさせる。
2. 関節を意識して前に体重を乗せながら、
3. ぐっと立ち上がる。
4. お尻の方から座る。

これを10回繰り返して1セット。2セット行うのが目安。

どのような運動をするのであれ、「継続のコツは無理をしないこと」だと、SAMさんは諭す。ジェロントロジーの視点では、「ハードな動きを1回するより、ソフトな動きを2回する方がいい」そうだ。これを踏まえて、運動習慣を身につけよう。

「ブルーゾーン」の食習慣を取り入れる

「食事」については、SAMさん自身は、ストイックな制限をかけていない。

以前、有名なトレーナーのもと、毎日7食、鶏の胸肉や卵の白身ばかり摂るような高タンパクの食事をしていたが、1週間でギブアップ。以降、ストレスを感じるほど極端な食事は、やめたという。

現在は、糖分、脂質、グルテン(小麦)は控えめにする一方で、タンパク質を豊富に含む食材や、野菜のような抗酸化物質に富む食べ物をメインにしている。

また、健康な百寿者が多く住む、(沖縄といった)「ブルーゾーン」の人々の食習慣を参考にしているという。例えば「腹八分目に抑える」「適度に赤ワインを飲む」といったもので、ジェロントロジーでも注目されている。これらの知識も積極的に生かすことで、健康な食生活に近づいていく。

「睡眠」については、若い頃は超夜型であったのが、今は午前1時から2時の間に就寝し、朝は5時50分に起きて、愛犬の散歩をするというサイクル。

睡眠時間が約7時間の人たちが、死亡率が最も低いというデータがある。しかし、必要な睡眠時間は個人差が大きいため、これにとらわれる必要はなく、むしろ重要なのは規則正しい睡眠リズムだと、SAMさんは説く。人間には、朝に陽光を浴びてから、14~16時間後にメラトニンというホルモンが分泌され、これが眠りを誘う仕組みがある。メラトニンの分泌リズムを崩さないためにも、日中はできるだけ陽の光を浴び、夜は室内の照明やスマホのバックライトを抑えることが重要なのだそうだ。

習いごとや趣味でコミュニティとのつながりを築く

SAMさんが、もう一つ重視しているものに「コミュニティ」がある。
これは、地域のコミュニティに所属し、参加し続けることが、自身の健康維持に役立つというジェロントロジーの知見に基づくものだ。SAMさんも、ダレデモダンスを生み出すまでの過程で、親戚や地域の人たちとのつながりが築かれ、コミュニティが「生きがいやモチベーション」につながることを、肌身をもって実感している。

定年後の男性が、コミュニティとつながりが持てず、孤立する話をしばしば耳にする。そうした人にSAMさんがすすめるのが、「習いごと」だ。

人付き合いが苦手な人でも、習いごとは手っとり早いコミュニティへの参加手段です。初心者向けにも様々な講座があります。そこには先生がいて生徒がいる。何かを教わることが目的なので、それが習得できるだけで満足感も得られます。(本書より)

例えば料理教室は、作れる料理のレパートリーが増え、食に対する知識も得られ、生活が豊かになると、すすめられている。もちろん、熱中できる趣味があるなら、それを起点に人とのつながりをつくるのもベター。それは、昔好きだったことを掘り起こしての再挑戦でもいい。「何かこれだけ」という考えでなく、「やってみたいことにどんどん挑戦」していき、複数のコミュニティに参加するようになれば理想だと、SAMさんは指南する。

* * *

ジェロントロジーを学んだSAMさんは、超高齢化社会の負の側面が強調される、昨今の風潮に疑問を呈する。なぜなら、これにまつわる問題は、シニア世代が一律に「人に頼るしかない存在」だという前提で考えられているからだ。だが、最後まで健康に気を使い、社会に貢献し続ける姿勢を持つ人が増えれば、「何も恐れることはない」と、SAMさんは結んでいる。

文中イラスト:森優、SAM著『いつまでも動ける』(クロスメディア・パブリッシング)より

【今日の健康に良い1冊】
『いつまでも動ける。 年をとることを科学するジェロントロジー』


SAM著
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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

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