はじめに-北条泰時とはどんな⼈物だったのか

北条泰時(やすとき)は義時の長男で、鎌倉幕府第三代執権を務めた人物です。父の死後執権となり、評定衆の設置、御成敗式目の制定など、御家人中心の武家政治の確立に努めました。

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、義時の最愛の息子で、第三代執権にして日本史上屈指の名宰相(演:坂口健太郎)として描かれます。

目次
はじめに-北条泰時とはどんな⼈物だったのか
北条泰時が生きた時代
北条泰時の足跡と主な出来事
まとめ

北条泰時が生きた時代

北条泰時が生きたのは、本格的な武家政権による統治が開始した鎌倉時代です。源頼朝が起こした鎌倉幕府でしたが、源氏将軍はわずか三代で途絶えてしまいます。その後の鎌倉幕府を引き継いだのが、執権の北条氏です。北条義時の子である泰時も同様に、執権として幕府の運営に尽力しました。

北条泰時の足跡と主な出来事

北条泰時は、寿永2年(1183)に生まれ、仁治3年(1242)に没しています。その生涯を出来事とともに紐解いていきましょう。

執権・北条氏の子として生まれる

北条泰時は、執権・義時の長男として生まれます。建久5年(1194)に元服。源頼朝が烏帽子親(えぼしおや)となり、名前の一字を与え「頼時」と名乗らせましたが、のち「泰時」と改名します。その後、建保元年(1213)の「和田氏の乱」では、幕府を防衛するなど奮戦し、和田氏を滅ぼしました。

承久3年(1221)に「承久の乱」が勃発すると、叔父・時房(ときふさ)とともに大軍を率いて東海道から上洛、後鳥羽上皇方を破りました。泰時はその後も在京して乱後の処理にあたり、これが六波羅探題(ろくはらたんだい)の始まりとなります。

父の死後、執権となる

元仁元年(1224)6月、父・義時の死で鎌倉に帰り、跡を継いで執権となった泰時は、北条政子の死後、大いに政治の刷新を試みます。まず、執権とならんで執権を補佐する「連署(れんしょ)」を設けて、六波羅にいた時房をこれに任じました。さらに幕政を評議する「評定衆(ひょうじょうしゅう)」を設置。これらの政策は、それまでの独裁政治を改め、合議政治への転換を図るものでした。

承久元年(1219)に源実朝が殺された後には、藤原頼経(よりつね)を鎌倉の主として京都から迎えます。翌2年には朝廷に申請して、頼経を征夷大将軍に任命させるなど、将軍に関する体制を整備しました。また、寛喜2年~3年(1230~1231)頃の大飢饉には、倹約を命ずるとともに出挙米(すいこまい)の貸付け、年貢免除などによって、領民の救済に努めたのでした。

さらに貞永元年(1232)には、最初の武家法典である『御成敗式目』を制定し、御家人間の相論において公平な裁判を行うための客観的な規範を作ります。こうして泰時の代に、名実ともに執権政治が確立したのでした。

対・寺院政策

当時、畿内の大寺院は強大な勢力を誇り、朝廷も対策に苦しんでいましたが、泰時は僧徒の武装禁止を求め、寺院側の不当な要求に対しては抑圧の態度で臨みました。

嘉禎元年~2年(1235~1236)の石清水八幡宮と興福寺との紛争では、朝廷に代わって収拾に乗り出し、前例を破って大和に守護を置き、興福寺僧の荘園に地頭を置くなどの強圧策によって、興福寺に収拾案を認めさせました。同じ時期の延暦寺と近江守護・佐々木氏との紛争でも毅然たる態度で臨んだと伝えられています。

金銭的な政策

暦仁元年(1138)、将軍・藤原頼経に従って上洛した泰時は、京都に「篝屋(かがりや)」と呼ばれる番所を置き、治安を強化します。しかし、貨幣経済の発展によって、困窮した御家人が所領を失う傾向はすでに始まっていました。泰時はこれに対処するとともに、御家人領の統制を強めます。

延応元年(1239)には陸奥に銭の流布を禁じ、山僧・富商を地頭代にすることを禁じました。『御成敗式目』は恩領の売買を禁じたほかは、御家人がその所領を自由に処分するのを認めていましたが、仁治元年(1240)の「追加」では、恩領については質入までも禁止し、私領についても御家人以外への売買を禁じたのです。

道理を愛する清廉な政治家。次ページに続きます

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