シミやしわ、肌荒れに肌のくすみ、年齢を重ねるごとに肌の悩みは増えていきます。ケアをしたほうがいいと思いながらも、忙しい日々のなかでなかなか手がつけられず、「もう年だから……」と諦めてしまっていませんか? 『老けない人が食べているもの』の著者である、医師・工藤あき先生は、「老ける人と老けない人の差は、遺伝やスキンケアの問題だけでなく、肌をつくる食事の内容にある」と言います。そこで、体の中から肌を変えていくインナーケアの大切さをご紹介します。
文/工藤あき(消化器内科医・美腸・美肌研究家)
酸化は若さの大敵
細胞を若く保つためには、ターンオーバーだけでなく、「酸化」と「活性酸素」、そして「抗酸化物質」について説明しておかなければなりません。酸化はインナーケアを理解するうえで重要な用語です。
酸化は、よくリンゴを例に説明されます。リンゴを切って、そのまま置いておくと、どうなるでしょうか。切り口が赤く変色しますよね。これはリンゴの断面が空気中の酸素に触れることによって、リンゴに含まれる「ポリフェノール」という成分が、ちがう物質に変化するためです。
このように、酸素がほかの物質と結びついて起こる反応を酸化といいます。リンゴ以外でも、桃やバナナ、アボカドなども、同じ理由で色が変わります。鉄が錆びると赤くなるのも、やはり酸化による変化です。
実は、私たちのからだのなかでも、酸化が起きています。からだが錆びるなんて嫌だ! と思っても、残念ながら酸化と無縁でいることは誰にもできません。
ちょっと深呼吸してみてください。酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しましたよね。これも酸化反応のひとつです。私たちは、呼吸をして酸素を吸わなければ生きていけないのですが、呼吸でとり込んだ酸素の一部は体内で活性化され、活性酸素になります。この活性酸素がからだを錆びつかせるのです。
活性酸素も完全な悪者ではなく、ウイルスや細菌を撃退する働きもあるため、実は私たちが生きていくうえで欠かすことができません。問題は、増えすぎること。過剰な活性酸素は、その強い作用によって正常な細胞や遺伝子まで攻撃してしまいます。
このように活性酸素が増えすぎて、デメリットのほうが大きくなった状態を「酸化ストレス」といいます。
シミやそばかす、しわなども、皮膚の細胞が酸化ストレスによって傷ついた結果。そしてターンオーバーが正しく行われないと、きれいな状態に戻りにくくなってしまうのは先ほど説明した通りです。
食べものでからだの酸化を防ぐ
呼吸をするだけで活性酸素が発生し、からだが酸化してしまう。なんだか怖いですが、安心してください。私たちのからだには、酸化ストレスに対抗してからだを守るシステムも備わっています。それが「抗酸化作用」です。活性酸素が過剰に発生するのを防いだり、傷ついた細胞を修復して再生させたりする機能です。すごい!
この抗酸化作用、つまり人間が本来もっている錆びないパワーを上回るほどの活性酸素が体内にどんどん増えてしまうと、酸化が進んでしまうわけですね。
私たちのまわりには、活性酸素を増やすものがたくさんあります。紫外線もそのひとつ。食品添加物や排気ガスやタバコ、ストレスもそうです。時間がたった揚げ物などの酸化した脂質を食べることによっても、酸化ストレスが生じます。さらに、加齢に伴って、からだの抗酸化作用は弱まっていくので、どんどん活性酸素がたまりやすくなってしまう怖さもあります。
じゃあ、どうすればいいの? と思ってしまいますよね。そこで活躍するのが「抗酸化物質」です。抗酸化物質は、活性酸素を除去したり、その害にさらされるのを防御したりする働きをもつ物質。私たちのからだのなかにも抗酸化作用が備わっていますが、それだけでは追いつかないとき、食べものやサプリメントで、外から錆びないパワーを補うこともできるわけです。
たとえば肌の酸化でいうと、加齢や過労、日焼けなどで、自前の抗酸化力が追いつかないときは、援軍を送る必要があります。美肌のためにビタミンCやビタミンEなどを含む食品を多めにとろうといわれるのは、抗酸化力を補って肌にダメージがおよぶのを防ぐためなんですね。いろいろな抗酸化物質のなかでも、特に強力な抗酸化力をもつのがポリフェノールです。
先ほど紹介したリンゴの例を思い出してください。リンゴの断面が変色するのはポリフェノールの酸化のせいでしたね。ポリフェノールは自ら活性酸素と結びついてくれます。つまり、身代わりになってほかの物質が酸化するのを防いでくれるのです。
このリンゴの切り口を私たちの肌に置きかえて考えたら、インナービューティーの実践のために心がけるべきことは、ごくシンプルです。絶対に避けたいのは日焼けやタバコ、大量の飲酒、油が酸化した揚げ物を食べること、過労やストレスです。
そして、ポリフェノールを始めとした抗酸化物質を含む食べものを、毎日の食生活に取り入れることが、老けない人への道なのです。
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『老けない人が食べているもの』(工藤あき 著)
株式会社アスコム
工藤あき(くどう・あき)
消化器内科医・美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、腸内細菌・腸内フローラに精通。腸活× 菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。NHK「ひるまえほっと」などに出演。著書には『体が整う水曜日の漢方』( 大和書房)などがある。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化器病学会・日本肥満学会・日本高血圧学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本内科学会認定医。