
自宅で過ごす時間が増え、その時間を有効に使って趣味と実益を兼ねて英語を学びたいと思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、実際に学習を始めても、本当に使える英語が身につくという実感はなかなか得られないものです。
自身も全く英語ができなかったところから、様々な気づきを得て英会話講師となった『have do getで英語は9割伝わります!』の著者・ジュリアーノ熊代先生はこう言います。「日本人は世界一英語に向いているし、英語は必ず話せるように なります」。今までの英語学習の常識を覆すメソッドで、使える英語が身につく方法をお伝えしていきます。
【登場人物】
ジュリアーノ先生(本文中:先生)
英会話講師。ブラジルと日本のハーフ。見た目は完全に外国人だが、生まれも育ちも純日本で、英語はもともと全く話せなかった。赤点レベルの英語力で、17歳で単身10か月の米留学へ。絶望的に通じない日々に挫折を味わうが、あの手この手で伝わる英会話を模索。 帰国後、英検1級を取得し1000人以上の生徒に直接教える中で独自メソッド「ヤマトイングリッシュ」を確立。
ゆかりさん(本文中:Y)
海外旅行好きの34歳会社員。様々な英語学習法を試し、英会話学校に2回通うも、単語を並べるカタコトの状態から上達せずに、ちょっぴりやさぐれ中。
【Lesson5】三単現のSはなくても意味通じる
先生:三単現のS。この扱い次第で英語嫌いが生まれてしまうので、最初に言い切ってしまいます。Sはつけなくても通じます !
Y:やった!……あれ、三単現って何でしたっけ?
先生:今は忘れていても大丈夫です。文法の名前なんて先生だけが知っていればそれでいいんです。主語が変わると別の言葉の形も変わる。こ のルールは日本語に存在しないため、多くの中学生がここでつまずき、 英語を嫌いになります。
Y:これですよ、これ! ここから英語が楽しくなくなっていったんです。英会話教室でネイティブの先生に何度も直されました。その度に会話が止まってしょんぼりするし、いつまでたっても慣れないし……涙。
先生:会話の最中にここまで神経をまわしたら、そりゃ大変ですよね。文章を作ることに慣れてない状態で、そこまで考えなくても大丈夫です。 大事なことなのでもう一回言います。会話中は三単現のSのことは忘れてください。
Y:ホントにいいんですね !?
先生:いいんです。問題なく通じますから。このSは、意識的にやるのではな く、無意識でできてほしいことなんです。英会話中にわざわざ意識してSをつけるのではなく 、自宅学習の成果として自然に表れてほしいものなのです。
Y:……結局つけなきゃいけないんですか ?
先生:つけなくても意味は通じます。でも、乱れた言葉遣いに聞こえるんです。He doesn’tをHe don’tで言うと「〜じゃねえよ」 と汚く聞こえます。He don’t have carは、「あの腰抜け野郎、車なんざ持ってねえよ」と聞こえかねません。
Y:え、私そんなキャラじゃない……。
先生:その通り。キャラになってしまうんです。乱れた言葉遣いも表現のひとつで、あえて使うラッパーもいます。学校なら「その言葉遣いはなんですか」と怒る先生もいるでしょう。ただ私たちはネイティブではないので、Sなしが即「失礼」だと受け取られるわけではありません。
Y:でもなんかアホっぽく聞こえそう……。
先生:受け取る側次第です。英語でコミュニケーションがとれる時点で「よ くぞ勉強してくれた」と感じる人もいれば、「アホっぽい」と感じる人もいるかもしれません。ビジネスのようなシビアな場では、きちんとした言葉遣いで臨みたいところです。ただ、まずは神経質にならずに「最低限正しい文法でキャッチボールができる」状態を目指すのでしたね。三単現のSはそれに含まれないと私は考えます。
Y:でも、間違っているとわかっていて話すのって、ちょっと嫌です。
先生:その思いをモチベーションに、自宅学習をがんばって、無意識でSを言える状態を目指しましょう。どんな英語を話したい、というビジョンも大切です。正確で知的な英語を話したいのなら、「伝わればOK」という人よりも、多くの勉強が必要です。 ということで、ここで三単現の S のルールをサクッとおさらいです。
三単現のS のルール
I get money from my mother.
「私、母さんからお金もらってるから」
という話が、ゆかりさんの友人のハナコだった場合。
↓
Hanako gets money from her mother.
「ハナコは親からお金もらってる」
このように get に S をつける、というルールです。
英語の基本構造 SVOのSについて、以下の条件がそろうときに、動詞にSをつけましょう、というルールです。
1 三人称 私とあなた以外。彼、彼女、うちのワンちゃん、このパソコンなど
2 単数 1 人、1 つ(「僕の友人たち」は複数なので含まれない)
3 現在形 過去でも未来でもなく、今のはなし
ちょっとややこしいのが、否定・疑問の場合。動詞ではなくdoがdoesに変化します。
【否定】
I don’t have〜 ⇨ He doesn’t have (後ろの動詞に S はつかない)
Do you like〜 ⇨ Does she like (後ろの動詞に S はつかない)
Does she likes とSを2回つけてはいけません。三単元のSは先にくるDoにつくと考えてください。1 回つけたらもう大丈夫。
✴︎ ✴︎ ✴︎
英語で話すときに文法の正確さにとらわれて言葉につまってしまうより、「最低限正しい文法で通じればいい」と思うことで、積極的に会話をしようとすることができますね。英語が通じることの喜びを感じつつ、徐々に正しい文法を身につけていくことは、英会話学習の近道といえるのでないでしょうか。

『have do getで英語は9割伝わります!』
世界文化社
定価1650円

ジュリアーノ熊代
英会話講師。ヤマトイングリッシュ代表。日本人の父とブラジル人の母をもつハーフ。見た目は完全に外国人だが、生まれも育ちも純日本(東京都日野市生まれ、和歌山県育ち)。そのため、もともと英語はまったく話せなかった。赤点レベルの英語力で、17 歳で単身 10 か月の米留学へ。絶望的に通じない日々に挫折を味わうが、あの手この手で伝わる英会話を模索。 帰国後 、英検1級 、TESOL( 英語教授法 )の 課 程を修了し、1000人以上の生徒に英会話を直接教える中で独自のメソッド「ヤマトイングリッシュ」を確立 。 特技は空手(三段)と居合道(二段)。趣味はプラモデル製作。2020セミナーコンテスト東京大会優勝 、全国大会3位 。NHKや日本テレビなど 、 様々なメディアで翻訳や通訳、出演などで活躍中。
