取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、その時に感じた率直な思いを語ってもらう。
父親から進路を反対されたことは一度もなし。私など眼中になかった
今回お話を伺った、佳菜子さん(仮名・38歳)は、32歳の時に就職先が入るビルの同じフロアにある別会社に勤めていた男性と知り合い、結婚。現在は都内で2歳になるお子さんとの3人暮らしをしています。楽観的で出かけることが大好きな義家族への常識のなさに嫌気が指していると言います。
「義家族はコロナ禍でも前とまったく変わらない生活をずっと続けているんです。緊急事態宣言の時はさすがにおとなしくはなりましたが、それも一瞬でした。義家族の意見があまりにも一致しているので私のほうがおかしい人扱いを受けます。コロナのストレスからなのか、夫からの暴言も強くなってきていて……」
佳菜子さんは新潟県出身で、両親と4歳下に弟のいる4人家族。建築関係に勤める父親は厳格な男性上位主義者で、年下の母親は専業主婦。期待されていなかったと語る佳菜子さんは比較的自由にさせてもらえていたそう。
「親戚の会社で働く父親が私に話しかけることはほぼなくて、いつも弟が厳しく言われていた記憶が残っています。従妹も女の子が多くて、昔から弟に会社を継いでもらいたいという思いがあったのかもしれません。私は並レベルの高校に進んで、その後専門学校に進学したんですが、まったく反対されませんでした。就職で東京に出たのですが、そこでも反対したのは父親ではなく母親。私のことなんか眼中にないんですよ。弟は結局父親の後を追うことはなく別の仕事をしていますが、地元を離れる気はないみたいで、今も独身のまま実家の近くで暮らしています。小さい頃から長男として、という教育を受けたのが影響したのかな。その分、私は姉ながら本当に自由にさせてもらっています」
情報システム系の専門学校を卒業後は都内のチラシやパンフレットを請け負う会社に就職。そこで今の旦那さまと出会います。
「そこまで大きな会社じゃなかったので、同じフロアには別会社がいくつか入っていて、トイレや給湯室が共同でした。夫とは給湯室で何度も顔を合わすようになって、そこから話したり一緒にランチに行ったり。一度誘われたことがきっかけで飲みに行く関係になって、付き合うようになりました。出会ったのは私が25歳の時で、夫は2つ上なので27歳。同じフロアの会社に転職してきたんです。知り合って2か月後には付き合っていました。付き合って半年ほどで家賃の負担を軽くしたいからという理由で同棲を始めたんです」
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