光秀 絶頂からの転落
I:徳川家康関連でいえば、天正7年に家康嫡男・信康が切腹します。
A:この事件は従来、信長の命で切腹したことになっていますが、近年さまざまな説が出ているようです。『麒麟がくる』でどう描かれるのか、描かれないのか注目していきたいです。
I:描かれるなら菊丸(演・岡村隆史)が絡んでくるかもしれませんね。
A:なるほど。菊丸が絡んでくると見立てるわけですね……。『太平記』では大地康男さん演じる尊氏側近の一色右馬介(オリジナルキャラ)が後半で足利直冬に斬られます。幼いころに面倒を見ていたにもかかわらずです。なんか菊丸の影に一色右馬介の姿が浮かんで見えました。
I:また、そんな根拠もない妄想をいう。NHKに怒られますよ。
A:………。
I:その家康を光秀が安土で饗応するのが、天正9年です。幼いころに織田家で出会い、駿河で再会する。共通の知人として菊丸という存在がいる。このふたりの関係は怪しいといえば怪しい。
A:本能寺の変ということですか?それはどうですかね。ただ気になるのは斎藤利三の存在ですかね。斎藤利三は光秀重臣として本能寺の変にも密接にかかわってくるのですが、彼はもともと美濃の稲葉良通(演・村田雄浩)の家臣。引き抜いたわけですが、その経緯が描かれるかどうか。
I:きっと描かれませんね。先週から何度もいう通り尺が足りない(笑)。しかも、まだ武田氏攻めもありますからね。本能寺の変絡みでいうと、近年注目を浴びて、今年元日に放映された「本能寺の変サミット」(NHK BSプレミアム)で大きな支持を受けた「四国説」が『麒麟がくる』で登場するのかどうかという問題もあります。
A:長宗我部元親がキャスティングされるかどうかですね。今のところ全くわかりませんが。
I:光秀が取次役を務めていた長宗我部元親ですね。当初光秀側の意見を採用していた信長が突如、梯子を外して秀吉側の意見を採用したという。この四国政策の変換が、絶頂のときを迎えていた光秀を一気に転落させることになります。
A:現代の会社で同じことをやられたら、ぶちぎれるレベルの話ですね。その間の流れは『明智光秀伝』で藤田達生先生が詳述しています。
I:冒頭で細川藤孝の話題がありました。若いころから光秀と懇意にしていて、娘の嫁ぎ先でもある。本能寺の変の後、光秀は絶対味方になってくれると信じて疑わなかったのではないでしょうか。
A:ところが、その細川家が光秀に味方をしないわけです。これは大きな誤算だったと思います。
I:いったい何があったのですかね?
A:これは単なる憶測で、史料的背景はないですが、細川藤孝は秀吉に通じていたのではないかなあと。光秀からすれば「いつの間に秀吉と!」 という展開だったのではと思います。
I: 細川藤孝が秀吉に通じていたかどうかはわかりませんが、人たらしの秀吉がどのように立ち回ったのか『麒麟がくる』でも描かれるかもしれませんね。関白・近衛前久(演・本郷奏多)との絡みが出てくることを期待したいですね。
A:脚本に加えて演出力が試されるシーンになりそうです。
I:そのためには現状予定の44話ではやはり足りないような気がしませんか? 先週の記事へ寄せられた読者の声も同様の意見が多かったです。NHKの大英断に期待ですね。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり