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薬と耐性菌のいたちごっこが生み出す「スーパーバグ」|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第15回】

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悪夢の耐性菌“スーパーバグ”の誕生

「スーパーバグ」をご存知ですか? コンピューターウイルスやアプリの不具合ではありません。
どんな抗菌薬も効かない「超細菌」のことです。2018年にオーストラリアのドハティ感染免疫研究所の研究者が発見し、イギリスの科学誌「ネイチャー・マイクロバイオロジー」に発表しています。それによると世界10か国、78の研究所から受け取った黄色ブドウ球菌の数百の分離株の中から3種類の、どんな抗菌薬も効かない細菌が発見されたということです。

抗菌薬が効かない耐性菌については前回もお話しましたが、この問題は世界的に大きな問題として認識されています。国立感染症研究所の調査によると、既存の抗菌薬が効かない耐性菌は2017年には13例、2018年には42例に増加。海外で発生したとされる強力な耐性をもつ大腸菌などの腸内細菌が、日本国内でも増えつつあるということです。

細菌と抗菌薬のいたちごっこに勝ち目なし

耐性菌のおそろしさは言うまでもなく、効く薬がないことです。

国立国際医療研究センター病院と国立感染症研究所の共同研究によると、日本では耐性菌による推定死亡者数が年間8000人以上(ここでカウントされているのは細菌が血流に入った菌血症のみ)にもなるそうです。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による死亡が約4000人、フルオロキノロンという抗菌薬が効かない大腸菌による死亡が約4000人です。

少し専門的になりますが、以前から医療界で問題として取りざたされている耐性菌メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)についてご説明しておきます。

黄色ブドウ球菌は健康な人でも持っている常在菌のひとつです。健康な人が感染していても症状は出ませんが、高齢者や入院中の体力が低下している人が感染すると悪さをすることがあります。肺に入れば肺炎を、血流に入れば菌血症を起こし、死に至ることもあります。この黄色ブドウ球菌によく効いたのがペニシリンです。1920年代に製品化されたペニシリンは「奇跡の薬」と呼ばれました。初期には劇的に効果があったのですが、やがて耐性菌が現れました。次に開発されたのがメチシリンという抗菌薬です。そしてやがてメチシリンの耐性菌が現れます。これがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)です。

このように抗菌薬と細菌は、いたちごっこの関係です。耐性菌が生まれるたびに、製薬会社は新しい抗菌薬の開発を始めます。開発には膨大な研究と莫大なお金がかかり、製品化に至るまでに何年も、ものによっては10年以上もかかります。

一方、細菌はごく単純な生き物です。形を変えるのも簡単ですから、耐性菌になるべく変異するのも簡単です。製薬会社が何年もかけて抗菌薬を開発しようとも、耐性菌が生まれるのはいわば時間の問題なのです。今は、コストがかかりすぎる抗菌薬の開発に製薬会社のほうも息切れしているのが現状です。

抗菌薬の使用を減らすこと

かぜ、インフルエンザのウイルスも同じです。なぜ古今東西、かぜがなくならないのかといえば、毎年100ほどもあると言われるかぜウイルスが微妙に変異しているからです。インフルエンザも毎年、少しずつ変異しています。「タミフル」「リレンザ」の耐性ウイルスが登場し、2018年に発売された新薬の「ゾフルーザ」にもすでに耐性ウイルスが発見されています。

昔から生き物は細菌と共存してきました。善玉菌と呼ばれる菌もたくさんありますし、悪玉菌と呼ばれる菌にも人体に有用な働きをしてくれることもあります。抗菌薬(抗生剤)はそうした区別なく殺菌するものです。今、私たちにできるスーパーバグ対策は、ウイルス感染のかぜに抗菌薬を服用するなど、必要でない時は抗菌薬を使わない。そして、細菌が侵入してきてもそれを自ら撃退できる免疫力を付けておくということでしょう。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『薬は減らせる!』(青春出版社)。

構成・文/佐藤恵菜

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