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インフルエンザ薬「ゾフルーザ」に早くも耐性ウイルス問題|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第13回】

インフルエンザ薬「ゾフルーザ」に早くも耐性ウイルス問題|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第13回】
新薬「ゾフルーザ」発売後1シーズンで耐性化

毎年このシーズンになるとインフルエンザが話題になります。今シーズンはゾフルーザの「耐性ウイルス」が早くも出回りだしたというニュースが注目を集めています。

「ゾフルーザ」という薬の名はご存知でしょうか? 2018年3月に発売されたインフルエンザ薬としては最新の薬です。従来のインフルエンザ薬との作用機序の違いを、ごく簡単にご説明します。従来の「タミフル」「リレンザ」「イナビル」は、感染したウイルスが細胞外に飛び出したところを抑えてウイルスの増殖を防ぎます。一方、「ゾフルーザ」は感染したウイルスが細胞の外に出る前、つまり細胞内で増殖を抑えます。いずれもウイルスを殺す作用はありません。増殖を細胞の外側で抑えるか、内側で抑えるかの違いということになります。

「ゾフルーザ」の一番の良さは1回飲むだけという簡便さにあります。「タミフル」や「リレンザ」は1日2回、5日間服用しなければなりません。「イナビル」は1回服用で済みますが、吸引式なので、うまく吸引できない場合もありました。その点でいえば、1回2錠(体重80kg未満の人)の「ゾフルーザ」がもっともラクなのです。

肝腎な効き目については、さほど大きな差はありません。従来薬と比べると、ウイルスが体から消えるまでの時間は「ゾフルーザ」のほうが若干早いと評価されています。

そして「ゾフルーザ」は昨シーズン(2018〜19年シーズン)、日本で処方されたインフルエンザ薬の40%以上を占め、もっとも多く処方されたインフルエンザ薬になりました。しかしその一方で昨シーズンの終わりに、早くも「ゾフルーザ」の耐性ウイルスの存在が見つかったのです。

発売後わずか1シーズンで耐性ウイルスが登場

「ゾフルーザ」の耐性ウイルスとは、ひと言で言えば「ゾフルーザ」が効かないインフルエンザウイルスのことです。

「タミフル」にも「リレンザ」にも「イナビル」にも耐性ウイルスは存在します。インフルエンザウイルスに限らず、どんなウイルスでも、その増殖を抑える薬品が登場するたびに、その薬に適応し、打ち勝つウイルスが登場してきます。ですから一般的に、古い薬ほど耐性化したウイルスが多いため、新しい薬のほうが効きやすいと判断されるわけです。昨年はまだ耐性ウイルスの存在しない「ゾフルーザ」に処方が集中したわけです。実は「ゾフルーザ」のウイルスの出現は発売前から予想されていました。その予想をはるかに上回る速さで耐性ウイルスが発現したのです。

また、一般的に、耐性ウイルスの感染力は強くないというのが定説です。ところが「ゾフルーザ」の耐性ウイルスの感染力は強いとも言われています。

世界で一番インフルエンザ薬を使う日本

日本は世界でもっともインフルエンザ薬を使う国です。中でも「タミフル」は全世界の75%が日本で使われているといわれています。日本ではこのシーズンになると毎年インフルエンザが警戒され、ワクチン接種を勧めるニュースが飛び交います。そしてインフルエンザらしき症状が出ればすぐ病院に行って、48時間以内にインフルエンザ薬を処方してもらうことが常識のように考えられています。

しかし、これは世界的にみると特異と言っていいでしょう。インフルエンザといえども、かぜの一種で、水分を取って安静にしていれば数日で治るもの。高熱でフラフラする中、わざわざ薬をもらいに病院へ行くことはないというのが世界の一般的な考え方です。とはいえ、インフルエンザは劇症ですから、1日でも半日でも早く辛い症状から脱したいという気持ちもわかります。病院へ行って薬をもらうかどうかはあくまで本人次第ではありますが、もし、「インフルは病院に行って薬をもらわなくてはならないもの」と思われているとしたら、そんなことはありません。

耐性ウイルスは、薬がたくさん使われるからこそ生まれるものです。

「ゾフルーザ」の耐性ウイルスに感染した人には、当然「ゾフルーザ」は効きません。しかしその人が「ゾフルーザ」耐性ウイルスに感染しているかどうかは、詳しく検査してみなければわかず、ふつうはA型とかB型と診断されただけで「ゾフルーザ」を処方されることになります。薬の効き目はなくても、数日すれば自然に治癒するという経過をたどるでしょう。そのようにして「ゾフルーザ」が処方されつづけることで、耐性ウイルスも広がっていくわけです。

耐性ウイルスは薬とウイルスのいたちごっこ。薬を使い続ける以上なくなることはないのです。できることはただひとつ、薬を使いすぎないことです。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『薬は減らせる!』(青春出版社)。

構成・文/佐藤恵菜

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