選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
1951年英国ニューカッスル生まれの歌手スティングは、今年で68歳になる。ロック・ミュージシャンとしてのみならず、俳優・作家としても長年活躍し、ジャンルを越えてさまざまな音楽にもかかわりを持ってきた。そんなスティングが、デビューしたロックバンド「ポリス」の頃からソロ活動に至るまで、原点回帰ともいえるヒット曲の数々を新たなアレンジとともに歌い直したセルフカバー・アルバム『マイ・ソングス』を発表した。
年齢を重ねた歌手にとって難しいのは、歌唱法や声域によっては、どうしても声の衰えが出てしまう点にあるが、スティングの場合、あの見事な声は、迫力と深みを加え、さらなる進化を遂げている。驚くべきことだ。過去の重要な楽曲はほぼすべて収められている。時代が変わっても、なおもファイティング・ポーズ(闘う姿勢)を止めない、真の男の風格がここにはある。
【今日の一枚】
マイ・ソングス
スティング(歌)
発売/ユニバーサル ミュージック
電話:045・330・7213
2500円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2019年7月号のCDレビュー欄「今月の推薦盤」からの転載です。