文/鈴木拓也
■患者数はおよそ580万人
人の背骨は、全部で24個の椎骨(ついこつ)が積み重なったもので、腰部に位置する5つの椎骨は腰椎(ようつい)と呼ばれる。椎骨の内部は脊髄や神経が走り、椎骨同士の連結組織として黄色靭帯(おうしょくじんたい)もある。そうした組織の隙間(空洞)を脊柱管という。
最近よく聞くようになった脊柱管狭窄症とは、加齢などの要因で特に腰椎の脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで、しびれや痛みといった症状として現れる病気だ。国内の患者数は推定580万人。放置すれば症状は徐々に悪化し、歩行に困難をきたすなどして、最悪の場合は医療機関で手術をすすめられることもある。
命まで取られることはないとはいえ、生活の質をはなはだ下げるこの病気。実は簡単なストレッチで改善できると言うのは、西住之江整体院の白井天道(しらいてんどう)院長だ。
白井院長は、著書『寝ながら1分! 脊柱管狭窄症を自分で治す本』(SBクリエイティブ)で、そのやり方を説明している。
■自宅で簡単に腰椎のねじれをチェック
理論的な話はまずおいて、脊柱管狭窄症の自覚症状がある方は、以下の動作をやってみよう。
1. 床に仰向けに寝る。このとき、両膝はくっつけて立て、両腕は体から45度くらいに開く。
2. 両膝をくっつけたまま、足全体を右に倒す。このとき、肩は床につけたまま。
3. 今度は、両膝をくっつけたまま、左に倒す。
膝を左側に倒した際に右の腰に痛みが出ただろうか? あるいはその逆で、膝を右側に倒した際に左の腰に痛みが出ただろうか?
実はこれ、腰椎が左にねじれているのか、右にねじれているのかの診断。痛みが右の腰なら、腰椎のねじれは左、その逆ならねじれは右となる。
白井院長によれば、脊柱管狭窄症の原因の多くは、腰椎のねじれだという。ねじれと言っても、10度の傾きにも満たないわずかなもの。整形外科にてレントゲンで診ても分からない程度のものだが、専門家が触診すれば分かるという。
■ねじれを改善する簡単ストレッチ
こうしたねじれが、脊柱管を狭めて脊柱管狭窄症の症状を発現させるとのことで、言い換えれば、ねじれを元に戻すことで症状は改善すると白井院長は述べる。そのために本書で紹介されているのが、次のようなストレッチだ。
【腰椎が右にねじれている場合の改善ストレッチ】
1. 床やベッドに仰向けに寝る(体全体はまっすぐに)。このとき、両膝をくっつけて立てる。
2. 両膝をくっつけたまま、足全体を右に20秒倒す。このとき、腕は体から45度くらいに開く。肩はつけたまま。
3. 今度は、両膝をくっつけたまま、左に40秒倒す。
症状の程度が、歩き出すと痛い、起床・寝返りで痛みが出るものであれば、1週間ほど続ければ軽快してくるという。間欠性跛行だと症状の重さによって違いはあるが、1~6か月間続けることで「痛みはほぼ解消」するという。
■腰椎をねじる生活習慣に要注意
ストレッチを継続するとともに注意したいのは、腰椎をねじる生活習慣を改めることだと、白井院長は釘を刺す。そうしないと、ねじれは再発・悪化するリスクがある。
本書では、そうした生活習慣がいくつか挙げられている。例えば、背中を丸めて床に座っている姿勢。痛みが出なくてラクなので、ついついやってしまうが、「実はこの“ラク”“痛みが出ない”姿勢をとることに、脊柱管狭窄症を悪化させてしまう落とし穴」があるという。なぜなら、この姿勢だとかえって腰椎に負担をかけ、ねじれさせてしまうからだ。
床に座ってテレビを見る習慣がある人に白井院長がすすめるのは、「寝転がって見る」。この場合、左側を下に横向きに寝てしばらくしたら、右側を下、またしばらく経ったら左側を下というように姿勢を変えるようにする。
座り方以外に、ウォーキングや立ち姿勢などについてもアドバイスがあるので、1つ1つ改めていくようにしよう。
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本書には、椎間板ヘルニア、靭帯の肥厚、腰椎すべり症という症状別の応用ストレッチや、腰椎のねじれを予防する「ゆるストレッチ&筋トレ」など、さまざまなセルフケアが網羅されている。脊柱管狭窄症を自力で改善したいという方は、読んで実践してみてはいかがだろうか。
【今日の健康に良い1冊】
『寝ながら1分! 脊柱管狭窄症を自分で治す本』
https://www.sbcr.jp/product/4815604387/
(白井天道著、本体1300円+税、SBクリエイティブ)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。