取材・文・撮影/小坂眞吾(サライ編集長)
『サライ』最新号の特集は「朝めし」。一日を健やかに過ごすために必須のメニューを取材しているが、あわせて「朝めし自慢の宿」もたっぷり紹介している。
宿に1泊する場合、夕食は外の美味しい店で食べればいいし、それが旅の大きな楽しみでもあるが、朝食は宿で摂るしかない。だから宿選びでは、朝めしが選択の鍵を握る。
私自身は、仕事が不規則なこともあって、ふだんはなかなか朝めしを食べられない。でも泊まりがけの出張に行くと、夜更かしをしないせいか、布団に入るときから朝めしが楽しみになる。宿の朝めしが美味しければ、その日一日を幸せな気分で過ごせて、取材もうまく行くことが多いのだ。
5月30日に、京都駅八条口に開業する『ホテルヴィスキオ京都』は、そこに注力したホテルである。京都駅直結の『ホテルグランヴィア京都』の系列だが、グランヴィアが総合サービスの充実を目指すのと違い、ヴィスキオは「宿泊主体型」。観光こそが旅の主目的、という人にうってつけの形態だ。
この『ホテルヴィスキオ京都』の最大の特徴は、朝食の充実。ブッフェスタイルで、毎朝100種類以上の料理が並ぶ。
レストランをプロデュースしたのは、JR西日本ホテルズ総料理長の佐藤伸二さん(62歳)。
「京都市内ではホテルの開業ラッシュが続きます。その中で抜きん出るにはどうしたらよいか。部屋の広さや寝心地では、なかなか明確に差がつくものではありません。ならば、朝食で圧倒するしかない、と」
佐藤さんは三重県生まれの大阪育ち。子どもの頃に食べたコロッケやハンバーグに憧れ、洋食の道へ。堂島浜の『クラブ関西』でフレンチのあらゆる仕事を修業したのが、今日の糧になったという。フランス料理における長年にわたる功績から、フランス共和国農事功労章シュヴァリエを受章している。
そんな佐藤さん肝いりの朝食は、地元京都の素材とフレンチの出会いが面白い。グラタンを生麩、里芋、西京味噌でアレンジしたり、フォワグラのテリーヌに京都水尾の柚子ジャムを合わせたり。酒処・伏見の酒粕を生かしたかす汁には、ラーメンを入れて楽しむ趣向もある。
もちろん京都ならではのおばんざいやだし茶漬けもあり、毎朝供されるメニューは和洋あわせて100種類以上。
「数が多すぎるとも言われるんですが、連泊するお客さまも大勢いらっしゃいます。何泊しても毎朝、新しい発見をしていただき、新鮮な気持ちでお出かけいただきたいのです」(佐藤さん)
驚くべきは朝食の値段で、大人ひとり2000円(税別)。宿泊しない、朝食のみの利用もできる。
明日の朝はヴィスキオで朝食だから、今晩は軽めにしてさっさと風呂入って寝よう――そんなことさえ思わせる、充実の朝めしである。
ホテルヴィスキオ京都●アクセス:JR京都駅八条口より徒歩約2分。室料:モデレートダブル/モデレートツイン3万5000円(21.5㎡)~。チェックイン15時、チェックアウト11時。全423室。公式サイト https://www.hotelvischio-kyoto.jp/