文/鈴木拓也

最近になって、スーパーやコンビニのドリンクコーナーでよく見かける「アーモンドミルク」。これは、アーモンドと水から作られる飲み物で、牛乳は含まれていない。

牛乳・豆乳に続く「第三のミルク」として、にわかに注目されるようになったが、その歴史は古い。中世ヨーロッパでは、(肉や牛乳が禁じられる)四旬節にキリスト教徒はアーモンドミルクを飲み、かのモーツァルトも行きつけのカフェで愛飲した。

現代の日本において、アーモンドミルクがもてはやされつつあるのは、折からの健康ブームでアーモンドが持つ健康効果が見直されているため。昨年11月には、その効用を解説した『「老けない」「太らない」アーモンドミルクできれいに生きる』(井上浩義著/主婦と生活社)が刊行されている。

本書を読むと、アーモンドミルクの素材となるアーモンドには、健康意識の高い若い人だけでなく、もっと上の世代にもアピールする効用があることがわかる。では、どのような効用があるか、いくつか紹介しよう。

■体内の酸化と糖化を抑制

人体の老化現象は、主に体内の細胞が酸化もしくは糖化することで起きる。細胞を構成するたんぱく質と活性酸素が結びつくのが酸化、糖と結びつくのが糖化で、徐々に身体を劣化させる原因となる。

アーモンドは、そのどちらも抑制する成分―ビタミンEとアルギニン―が豊富に含まれている。この2つの成分は、他の様々な食品にも含有されているが、どちらも豊富に含んでいる点ではアーモンドがトップクラスだという。

ビタミンEは、細胞膜に存在することで細胞の酸化を防ぎ、アルギニンはたんぱく質と糖の結合を阻害する作用がある。また、ビタミンEには、しみやくすみの元となるメラニン色素の排出を促し、毛髪の質に直結する頭皮の衰え防止にも効果があるという。このようにして、アーモンドはアンチエイジングに力を発揮する。

■血糖値上昇をゆるやかに

糖質を含む食べ物を摂ると、血液中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が上昇する。血糖値の急上昇を繰り返す糖質過多の食生活を続けると、糖尿病リスクが増大することは、よく知られている。

アーモンドに含まれるオレイン酸とマグネシウムには、糖尿病をもたらす要因となる血糖値の急上昇をゆるやかに抑える働きがある。また、100gあたり約10g含まれる食物繊維が腸の中をゆっくり動くことで、糖が血中に取り込まれる速度を遅くする。さらには、「糖を分解する消化酵素アミラーゼの働きを抑える成分が含まれ、摂った糖を体の中に吸収させるのを防ぐ」という。

アーモンドミルク自体は、100gあたり約1gしか糖質を含まず、糖尿病予防にはもってこいのドリンクである。

■悪玉コレステロールを減らす

血液中に悪玉コレステロールが蓄積すると動脈は硬く狭くなり(動脈硬化)、心疾患につながることもある。これについても、アーモンドの有効成分オレイン酸が活躍する。

オレイン酸には、善玉コレステロールは維持したまま、悪玉コレステロールを減らす作用がある。アーモンドの脂質の7割はオレイン酸なので、他の食品と比べてもその作用は強力。実質的な血管の若返りが期待できるという。

■アーモンドミルクの作り方

本書の著書である井上浩義教授(慶應義塾大学医学部)が、アーモンドをそのまま食べるよりアーモンドミルクを勧めるのは、栄養素の吸収率が2倍以上になるからだという。もちろん、市販のパック入りのものを飲んでもかまわないが、簡単に作れるため「自家製アーモンドミルク」の作り方も掲載されている。

材料は、生またはローストしたアーモンドと水、そして塩少々。アーモンドと水は1:2の比率で用意する(例えば、アーモンド1カップに対し水2カップ。これで360mlできる)。

まず、アーモンドに水(分量外)をひたひたに注ぎ、1~2晩おく。

アーモンドを容器に入れ、水をひたひたに注いで1~2晩おく

アーモンドを容器に入れ、水をひたひたに注いで1~2晩おく

 

ザルにあげ水気を切りミキサーに投入。新しい水と塩も加えて1~2分攪拌する。

ミキサーに入れて新しい水で攪拌する

ミキサーに入れて新しい水で攪拌する

 

コップなど容器に移して、好みでシナモンかバニラエッセンスをひとふりしてできあがり。冷蔵庫で2~3日持つ(ローストアーモンドなら約5日)。

好みでシナモンかバニラエッセンスをひとふりして完成

好みでシナモンかバニラエッセンスをひとふりして完成

 

味は、薄味の豆乳といったところでクセがなく、水代わりに飲める。濃い味にしたい場合、2日つけおくとよい。ちなみに本書には、応用レシピも多数掲載されている。

*  *  *

「アーモンド博士」と呼ばれる井上教授が、アーモンドの効果を実感したのは、カリフォルニア州のアーモンド農家を訪れたときのこと。そこで働いていた人たちが、実年齢より20歳くらい若く見えることに仰天。何か特別な健康法をしているわけでもなく、一般の人と違うのはアーモンドを毎日食べていることだけという事実から、アーモンドについて研究を始めたという。

1961年生まれの井上教授は、よく「若いね」と言われるそうで、50歳のときに肌年齢を測ったら30代という結果が出たという。これは、毎日のようにアーモンドを摂り、アーモンドミルクを飲んでいるおかげと井上教授は語る。手軽にアンチエイジングをしたい方は、アーモンドを食生活に取り入れるとよいだろう。

【今日の健康に良い1冊】
『「老けない」「太らない」アーモンドミルクできれいに生きる』

http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-15244-9

(井上浩義著、本体1,200円+税、主婦と生活社)

『「老けない」「太らない」アーモンドミルクできれいに生きる』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

 

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