夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。月曜日は「健康・スポーツ」をテーマに、野球解説者の山本昌さんが執筆します。
文/山本昌(野球解説者)
今回で3回目となります「夕刊サライ」の連載、野球解説者の山本昌です。
前回は僕が引退してからどういった体調管理をしているのか、運動や食生活をお伝えしました。今回は現役時代にはどういったことを意識していたのかをご紹介しようと思います。
■現役生活を支えた小松菜ジュースとカレーライス
野球選手をはじめ、アスリートは大なり小なりルーティンがあると思いますが、僕は食事にもルーティンがありました。
それは、1日の始まりに小松菜ジュースを飲むこと、登板日の昼食はカレーライスを食べることです。
32年間現役生活を送ってきた僕ですが、やはり登板日の緊張は慣れるものではありませんでした。
緊張感から食事を受け付けないこともしばしばありました。ですが、カレーライスであれば流し込むように食べることができるので、登板日の昼食はカレーライスに決めました。
どうしてそこまでして食事をするのか、と思われる方もいるかもしれません。
野球選手は試合日に試合だけをするわけではありません。ポジションごとにすることは異なりますが、試合前の練習もありますし、それぞれが最終調整をして試合に臨みます。その時点ですでにエネルギーを消費しているので、試合前の食事はエネルギー補給としてとても大切なことなのです。どんな料理なら食べることができるか試行錯誤した結果、カレーライスにたどり着きました。
■いい野球選手は夏場に太る!?
間もなくプロ野球レギュラーシーズンが開幕を迎えますが、徐々に暑い季節がやってきますね。選手ごとに個人差はありますが、夏場に苦戦する選手は割合多いのではないかと思います。いわゆる「夏バテ」です。暑さから食が細くなり体重が減ってしまうことで体調を崩してしまったり、筋力が落ちたり、それに伴ってメンタルも弱ってしまったりという悪循環が起こってしまいます。
これは野球選手だけではなく、読者のみなさんにも言えることだと思います。
僕は、野球選手は夏場に太れるくらいの選手がちょうどいいと思っています。きちんと食事をする意識が高いということもあると思いますが、それが習慣化されているからこそ、季節に左右されることなく、常に良いパフォーマンスを発揮できる体を維持することが可能になるのだと思います。
食欲がない時でも「これだったら食べられる」「これを食べるようにしよう」といった意識付けは一般の皆さんの夏バテ対策にもなるのではないでしょうか。
今は何でも便利な時代なので、エネルギー補給のゼリー飲料やサプリメントなどで補ってしまえばいいという方も多いかもしれません。ですが、年齢を重ねてもベストな体を維持していくためには、まずは日ごろの食生活を楽しく、充実したものにすることが大切だと思います。ちなみに、僕は現役時代に夏バテを経験したことはありませんでした。
これは食事の習慣が良かったのだろうと自負しています。
■ベルトの締め具合が僕の健康バロメーター!
現役時代、食事以外にも毎日必ず行なっていたのが体重計に乗ることです。
自分の健康状態を計るには、数値化される体重がやはり一番わかりやすい指標だと思います。
僕は、ユニフォームを着る時、ベルトの締め具合で自分の体重がベストの状態から増えているな、減っているな、と把握をすることができました。もちろん体重計も使ってはいましたが、ベルトを締める時の感じから500g単位で増減を感じ取れる感覚が身についていました。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ベルトを締める作業が僕の健康バロメーターになっていたわけです。
自分の体の状態をきちんと理解することが良いパフォーマンスに繋がりますし、32年もの長い期間、プロ野球選手という仕事をやってこられた大きな理由だと思います。
毎年夏が近づいてくると「夏バテ」「熱中症」などによる悲しいニュースを耳にします。夏になったから気を付けようではなく、ぜひ今日からでも自分の体を知ること、ベストな状態を保つことを意識してみてはどうでしょう。楽しい夏を迎えるために、今から準備です!
文/山本昌(やまもと・まさ)
昭和40年、神奈川県生まれ。野球解説者。32年間、中日ドラゴンズの投手として活躍し、平成27年に引退。近著に『山本昌という生き方』(小学館刊)。