夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。月曜日は「健康・スポーツ」をテーマに、野球解説者の山本昌さんが執筆します。
文/山本昌(野球解説者)
いよいよスタートしたサライ.jpの連載ですが、今回が2回目のお届けとなります。野球解解説者の山本昌です。前回は僕の左腕がまっすぐに伸びなくなった経緯と、それを通じて僕が得た体験をお話しいたしました。
今回も、少し共通する部分があるのですが、現役時代ではなく、引退後の体調の変化をどう調整管理しているか、僕なりの健康維持方法をお伝えできたらいいなと思っています。
■50歳で社会人デビュー。生活の変化が体型の変化に!
僕は2015年シーズンの終了と共に現役を引退しました。日々のトレーニング、試合はもちろん、ビジターの場合は長距離移動もあり、プロ野球選手の日常は一般の方から見ればハードに見えるかもしれません。
僕は18歳から中日ドラゴンズ一筋で32年間、50歳までそういった生活を日常として過ごしてきました。その日常が変われば体の変化も大きいだろうと思い、自分の体型維持のためにも新しい戦闘服となるスーツを10着作りました。
ところが、野球解説者として社会人デビューをした僕を待っていたのは想像を超えるハードな日々でした。何がハードかと言うと、分刻みでの取材やメディア出演、移動も新幹線や飛行機なので時間に遅れるわけにはいきません。そして、仕事の時間は早朝からの日もあれば深夜に及ぶ日もあり、思っていた以上の不規則な生活が始まりました。
当然、食事の時間はスケジュールに合わせて毎日決まった時間にというわけにはいかず、体型維持のためにと強い思いを込めて作ったスーツも着られなくなってしまいました。
■運動も食生活も「意識付け」と「習慣化」が大切
ある時、このまま生活のリズムが変わったからと流されてしまってはいけないと思い、すき間時間を使って体を動かすことを習慣化させようと考えました。天候にかかわらずできる散歩やジョギング、少し時間が取れる時はロードバイクで1時間くらい走るようにしました。
意識付けをすることでそれが習慣となり、引退3年目となる今でも続けています。特にロードバイクは走り始めた当初、小さなサドルにお尻が痛い思いをしましたが、今ではすっかり快適な走行を楽しんでいます。
よく聞く話ですが、体を鍛えるとなるとジムやプールなど、運動するための施設が整った場所へ行こうと思いがちですよね。ですが、僕は日々の生活の中でできることを継続することが大切だと思います。小さなことでも、習慣化して長く続けていけば何かしらの変化は現れますし、それが自身の意識を高めることにつながっていきますよね。
もちろん、体の管理をする上で食生活も大切です。僕は、現役時代も含めサプリメント類は飲んだことがありません。それどころか、アルコールも飲みますし、喫煙歴もあります。食事で大切にしていることは「何を食べるか」ではないのです。
僕は、食事をする時はまず野菜から食べることを意識しています。そして、食べる時間が普段より遅くなった時は食べる量を少なくします。そういった積み重ねが習慣化すれば、食べるものを制限しなくてもいいと思います。食べたいものを我慢することは意外と強いストレスがかかりますから、それは体に良くないですよね。
昨年、テレビの企画で脳ドックを受けました。自分の現状がどうなのかを知るいい機会をいただきました。結果は悪いところはなく、健康そのものだとわかったのですが、びっくりしたのは太ももです。現役時代と大差ない筋肉量に、お医者さんにもお褒めの言葉をいただきました。
生活サイクルが大きく変化したものの、継続して続けてきたことが良い結果につながっていると実感できた瞬間でした。そして、定期検診の大切さも学ぶことができました。
そんな僕も、今年で53歳です。年齢を重ねることで、発揮できるパフォーマンスが下がってくることは誰にでも言えることです。でも、日々の習慣次第でそのスピードを緩やかにすることは可能です。
自分自身の現状をきちんと理解して、いつまでも健康で、元気に生活していきたいですね。
文/山本昌(やまもと・まさ)
昭和40年、神奈川県生まれ。野球解説者。32年間、中日ドラゴンズの投手として活躍し、平成27年に引退。近著に『山本昌という生き方』(小学館刊)。