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作家・町田康さんと歩いた北九州市・小倉の「旨いもの」巡り

取材・文/編集部

森鷗外(1862-1922)は、明治32年(1899年)6月、小倉第一二師団軍医部長に任命され、2年10か月の間、福岡県の小倉で暮らしました。鷗外が37歳のときのことです。この地に遺された鷗外の文学的影響は大きく、小倉からは、火野葦平、松本清張といった芥川賞作家や、杉田久女、橋本多佳子といった女流俳人を輩出しています。

そんな近代文学の聖地でもある北九州市の小倉を、芥川賞作家の町田康(まちだ・こう)さんと歩いてきました。町田さんの小倉滞在記は現在発売中の『サライ』2018年4月号に掲載しております。森鷗外に憑依したかのような町田版「小倉日記」、必読です。ぜひとも、『サライ』誌上でご堪能ください!

さて、ここでは、町田さんと歩いた小倉の魅力を、同行したサライ編集部員の視点で、ほんの少しだけご紹介いたします(食べ物の店がやや多くなっております)

町田康さんは、昭和37年生まれの小説家・詩人・音楽家。芥川賞のほか、萩原朔太郎賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞など、名だたる文学賞を受賞している、現代の日本文学を代表する気鋭の文学者です。こちらの写真は、小倉北区鍛冶町に残る森鷗外の旧居を訪ねたときのひとこま。

ちなみに、町田さんが手にしているのは、鷗外が小倉を舞台に執筆した作品「小倉日記」「鶏」「独身」を収録した『北九州市立文学館文庫』。小倉城のとなりにある北九州市立文学館で購入できます(1000円)

「小倉日記」の記述を読みながら森鷗外旧居の間取りを確かめる町田さん。鷗外の文章の正確さを、ひしひしと感じさせられます。母屋はほぼ、鷗外が滞在していた当時のまま残っていて、庭のサルスベリやキョウチクトウも当時から残っている樹木とのことです。

この旧居、スナックやバーが建ち並ぶ飲食街の中に忽然と残っているのですが、江戸時代後期までは、このエリアは武家屋敷地区だったそうです。

【森鷗外旧居】
福岡県北九州市小倉北区鍛冶町一丁目7-2
電話:093-53-1604
10時~16時30分(月曜・祝日・年末年始休)無料
http://www.gururich-kitaq.com/search/category/detail.php?id=147

森鷗外旧居を後に、漁師直営の牡蠣小屋「はちがめ」へ。小倉を擁する北九州市は、じつは牡蠣の名産地でもあるのです。豊前一粒牡蠣(1籠1000円+税)をいただきました。牡蠣はくせがなくて、非常に美味でした。

焼いていると、突然、「バチッ!」と殻が爆ぜるのですが、その音に驚く声があちこちから聞こえてきて面白い、と町田さん。ご本人も「おおっ!」などと驚きつつ、牡蠣を焼いておられました。爆ぜるので、お客さんは全員、お店で借りたジャンパーを着用して、それぞれのテーブルで牡蠣を焼きます。

プレハブでできた、簡素な漁師の小屋なのですが、そこでくりひろげられる、全員ジャンパー姿の牡蠣バーベキューの光景は、ほのぼのとしていて、じつによい雰囲気でした。

【牡蠣小屋「はちがめ」】
福岡県北九州市小倉南区曽根新田南4-1-2
電話:080-5255-2491
10時~17時 金曜休
※2018年の開店期間は4月1日までの予定。

お次は松本清張記念館へ。「或る『小倉日記』伝」で芥川賞作家となった松本清張の業績が、全生涯にわたって展示されています。再現された書斎のカーペットには、たばこの焦げ跡まで残っていました。愛用品のカメラや、書棚にならぶ歴史や考古学の資料文献にも興味をそそられました。

【松本清張記念館】
福岡県北九州市小倉北区城内2-3
電話:093-582-2761
9時30分~18時(年末休)
入館料500円
http://www.kid.ne.jp/seicho/html/index.html

北九州市の戸畑区と若松区とは、市営の「若戸渡船」で結ばれています。所要時間は、わずか3分。乗船料金は大人100円。自転車を載せることもできます。バスやタクシーは、上の赤い橋、若戸大橋で行き来します。

「ポンポン船」と呼ばれて愛されてきた生活航路。時間に余裕があれば、ぜひ船で渡ることをおすすめします。

船で渡った先にある若松区には、昭和13年、出征中に「糞尿譚」で芥川賞を受賞した火野葦平(ひの・あしへい)の旧居「河伯洞」があります。葦平が太平洋戦争中に著した「麦と兵隊」などの兵隊三部作はベストセラーになり、国民的兵隊作家と称されました。

戦後も「花と龍」など、北九州を舞台にした多くの作品を書き続けた葦平の書斎が、そのまま残っています。

【火野葦平旧居『河伯洞』】
福岡県北九州市若松区白山1丁目16番18号
電話:093-771-0124
10時~16時30分(月曜・年末年始休)無料
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/wakamatsu/file_0043.html

石炭の積み出し港として栄えた若松区には、老舗の料亭「金鍋」があります。

この店の牛鍋コース(7,000円+税)は、作家・火野葦平が愛した伝統の味。味噌仕立てです。肉はもちろん、最初に出てくる魚のお造りも美味です。

【料亭 金鍋】
福岡県北九州市若松区本町2丁目4
電話:093-761-4531
11時~15時/17時~22時 不定休
http://www.kinnabe.com/

小倉駅のすぐそばの定食屋「味処 矢野」。ここで食べた「鰯のぬか炊き定食」(税込み800円)の味が忘れられません。

「食べたかった郷土の料理。ふつうにおいしい!」と、町田さんも述べておられましたが、乳酸発酵独特の甘みと酸味があって、鰯は骨までほろほろにやわらかくて、とてもおいしかったです。

「ぬか炊き」とは、山椒やゆずを漬け込んだぬか床で鰯や手羽元を煮込んだ郷土料理。北九州市屈指の「ぬか炊き」専門店であるこのお店では「ぬか床教室」も開催しています。ぬか床やぬか炊きを作ってみたいという方は、気さくな女将さんに相談してみてください。

【味処 矢野】
福岡県北九州市小倉北区浅野2-4-25
電話:093-551-0719
昼 月曜~金曜11時~15時、土曜11時~14時
夜 18時~22時
日曜・祭日・店主のライブがある日の夜は休
http://ajidokoro-yano.com/

* * *

以上、町田康さんと歩いた北九州市・小倉の魅力を、同行したサライ編集部員の視点でご紹介しました。つづきは発売中の『サライ』2018年4月号でご覧下さい!

取材・文/編集部 撮影/松隈直樹

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