
30~40代のプレ更年期や、40~50代の更年期の女性は「なんとなくの不調」「ちょっとした違和感」を抱くことが多くなります。
なかでも多くの人が困っている悩みは、日中の止まらない眠気です。
「ちゃんと寝てるのに眠い」「仕事中にウトウトしてしまう」……そんな症状に心当たりはありませんか?
実は、その不調には漢方薬が役立つことをご存知でしたか?
私の悩みにも漢方薬が効くの? 根本解消する方法ってあるの? そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
今回は「更年期の眠気」の原因や対処法について、あんしん漢方の薬剤師で、漢方薬製剤の開発研究に携わる碇 純子さんに教えてもらいました。
Q.夜しっかり眠っているはずなのに眠気が止まらない……

清美さん、52歳からご質問をいただきました。
「最近、朝起きてもスッキリせず、日中も眠気がひどくてつらいです。特に午後はぼーっとして仕事になりません。年齢のせいだと諦めるしかないのでしょうか?」
ご質問ありがとうございます。更年期の眠気は、ホルモンバランスや自律神経の乱れなどが原因となるため、とてもつらいですよね。
でも大丈夫。きちんとセルフケアや適切なサポートを取り入れれば、眠気の軽減をめざせます。まずは原因を知り、対策を始めていきましょう。
更年期の眠気の原因

更年期の眠気の原因はホルモンバランスの乱れや、加齢によるものなど複数あります。更年期の代表的な眠気の原因を1つずつ見ていきましょう。
1. エストロゲンの減少によるホルモンバランスの乱れ
更年期に入ると、卵巣の働きが弱まり、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が大きく減少します。
エストロゲンには、自律神経を安定させる働きや、睡眠をコントロールする作用もあるため、減ってしまうと「なんだか眠れない」「日中もボーッとする」といった不調が出やすくなるのです。
特に、睡眠に関係する「メラトニン」や「セロトニン」などのホルモンの分泌リズムにも影響が出るため、夜の眠りが浅くなり、結果的に日中の眠気が強まることに。
また、エストロゲンは脳の働きや感情にも関係しているため、イライラや気分の落ち込みなども伴いやすく、これがまた眠りの質を下げてしまうという悪循環に陥ります。
2. 加齢による睡眠サイクルの乱れ
年齢とともに、睡眠を維持する力が弱くなってきます。特に50代以降は、深いノンレム睡眠の割合が減少し、夜中に何度も目が覚める・早朝に目が覚めるといった「中途覚醒型」や「早朝覚醒型」の睡眠になりがちです。
しかも、加齢とともに「メラトニン」の分泌量も減少。これは睡眠リズムの司令塔のような存在で、これが少なくなると「眠る時間」や「起きる時間」のリズムがズレてきます。
そのため、しっかり寝たつもりでも脳と体がリカバリーできず、翌日も眠気が残ってしまうのです。
3. 自律神経の乱れ
ホルモンバランスの乱れに引きずられて、自律神経の働きも不安定になりがち。自律神経は「活動モード(交感神経)」と「休息モード(副交感神経)」を切り替える働きをしており、体温、血圧、心拍、睡眠など様々な機能をコントロールしています。
更年期には、些細なストレスや環境の変化でこの切り替えがうまくいかなくなり、
・寝る時間になっても交感神経が活発で眠れない
・夜中に目が覚めてしまう
・朝になっても副交感神経が優位のままで、起きてもボーっとしている
といった状態に陥ります。
その結果、日中もずっと眠気が取れず、集中力ややる気が出ないという日々が続いてしまうのです。
眠気が続く場合は一度診療を

まれにですが、強い眠気の裏には病気が隠れていることも。
たとえば、睡眠時無呼吸症候群や、重度のうつ症状、あるいは脳梗塞の前兆としてあらわれることもあります。
これらの病気は、自己判断では見極めが難しいものばかりです。
「眠気くらいで病院に行っていいのかな?」と思うかもしれませんが、
・強い眠気が2週間以上続く
・睡眠を取っても改善しない
・日常生活に支障が出ている
といった場合は、内科・婦人科・または睡眠外来や心療内科などで相談してみましょう。
更年期の眠気を改善するセルフケア

更年期の眠気を改善するには、以下のような対処方法もおすすめです。すぐに試せるセルフケアを4つご紹介します。
1. 運動で代謝量を上げる
「更年期だから」と運動を控えていませんか? 実はそれ、逆効果なんです。
更年期は筋力や代謝が自然と落ちる時期。体温調整やホルモンの分泌にも影響を与えるため、体を動かすことで自律神経が整い、眠気やだるさの改善につながります。
おすすめは朝の軽いウォーキングや、1日15分のストレッチ。無理のない範囲で毎日続けることで、夜はぐっすり眠れて、朝はスッキリ目覚めやすくなる体質へ。
特に日光を浴びながらの運動は、セロトニン(幸せホルモン)の分泌を促すため、気分も前向きに。結果的に眠気の悪循環も断ちやすくなります。
2. 寝る前にリラックスする習慣を取り入れる
眠りに入る1~2時間前は、交感神経(活動モード)から副交感神経(リラックスモード)へ切り替えるゴールデンタイム。この時間にスマホを見続けたり、家事でバタバタしていたりすると、脳が覚醒したままで眠りが浅くなりがちです。
リラックスを促すには、ぬるめのお湯(38~40℃)で20分の入浴がおすすめ。体温が少し上がったあとに下がる過程で、自然な眠気が訪れます。
さらに、深い呼吸をしながらの軽いヨガやストレッチも効果的。首や肩、腰まわりをゆるめることで副交感神経が優位になり、心身ともにスッと眠りに入りやすくなります。
3. トリプトファンの摂取
眠気の原因には「睡眠ホルモン(メラトニン)」の分泌不足が関わっていることも。その材料になるのが、必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」です。体内で作れないため、毎日の食事でしっかり摂ることが大切です。
トリプトファンを含む代表的な食品は、
・大豆製品(納豆・豆腐・味噌)
・乳製品(ヨーグルト・チーズ)
・バナナ、卵、ナッツ類
といった、手に入りやすくておいしいものばかり。
特に夕食に取り入れることで、夜の眠りにつながる「メラトニン」の生成が促されます。炭水化物と一緒に摂ると吸収率もアップするので、例えば納豆ご飯+ヨーグルト+バナナのような組み合わせがおすすめです。
4. 漢方薬を試す
ホルモンや自律神経のバランスを整えるには、体質に合った漢方薬が大きな味方になります。
眠気対策におすすめの漢方薬
・加味逍遙散(かみしょうようさん):上半身にこもった熱を冷ますことで、精神の興奮を和らげて不眠やイライラを改善する漢方薬です。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう):栄養を補い精神を安定させることで心身が疲れきって眠れないなどの不眠に用いられる漢方薬です。
ただし、漢方薬を選ぶ際にはご自身の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合っていない場合は、効果が出ないだけでなく、副作用が起こることがあります。
購入時には、できる限り漢方に精通した医師や薬剤師等にご相談ください。
「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。スマホで気軽に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスも登場しています。
AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。お手頃価格で自宅まで郵送してくれるため、手軽で便利です。
更年期由来の眠気は、生活習慣を改善してみて

更年期由来の眠気は、女性ホルモンのエストロゲン量の低下により自律神経が乱れ、脳への血流が滞り、酸素や栄養が届きにくくなることによって起こります。
生活習慣を改善することで、症状を緩和できる場合があります。
また、眠気はそれ以外にも脳の疾患などによって起こる場合もあるので、強い眠気が2週間以上続いたり、日常生活に支障が出ていたりする場合は、なるべく早く病院を受診しましょう。
<この記事の監修者>

碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・漢方薬生薬認定薬剤師
/ 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=221432a9sera0251&utm_source=sarai&utm_medium=referral&utm_campaign=250421
イラスト:にゃたり
