
30~40代半ばのプレ更年期や、40代後半~50代の更年期の女性は「なんとなくの不調」「ちょっとした違和感」を抱くことが多くなります。
なかでも多くの人が困っている悩みは更年期の不眠の症状です。
実は、その不調には漢方薬が役立つことをご存知でしたか?
私の悩みにも漢方薬が役立つのか知りたい! 根本解消する方法が知りたい!
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
今回は「更年期の不眠」の原因や対処法について、あんしん漢方の薬剤師で、漢方薬製剤の開発研究に携わる碇純子さんに教えてもらいました。
Q.不眠症がつらいです。仕事中にあくびをして上司から責められ……

貴子さん、50歳からご質問をいただきました。
「最近、きちんと睡眠をとれずに困っています。昔はベッドに入るとすぐ寝られるタイプだったのに、最近はなかなか寝つけず、寝ても途中で起きてしまうことが多くなりました。
夜眠れず、日中に眠くなってしまい、仕事中にあくびをすることも頻繁に。上司からは、『貴子さん、現場の士気低下につながるから気をつけて』と注意されてしまいました。
頑張って仕事をしているのに、不眠症のせいで評価が下がりそうです。やる気のない人間とは思われたくありません。この不眠の悩み、何が原因なのでしょうか」
ご質問ありがとうございます。
日常生活や仕事に影響を及ぼしてしまう不眠の悩み。改善したいと感じるのは当然ですよね。
その不眠には、更年期症状が関係している可能性があります。
きちんと適切な治療やセルフケアを行えば、更年期の不眠の症状の緩和をめざせます。
まずは、更年期の不眠の原因をしっかり把握して対処しましょう。
更年期の不眠の原因

まずは、更年期の不眠の原因について、主な3つの理由を挙げて解説していきます。
中途覚醒
中途覚醒とは、睡眠の途中で何度も起きてしまう状態のことを指します。
中途覚醒が起こる理由は様々で、たとえば以下の例があります。
・ストレス
・加齢
・うつ病
・アルコール摂取
なかでも、とくに多く挙げられるのがストレスによる中途覚醒です。
更年期世代は、人生に大きな変化が起こりやすい時期です。
パートナーの定年退職、子どもの独立、親の介護問題、老後の不安など、様々な出来事が重なり、知らず知らずのうちにストレスが蓄積していることがあります。
こういったストレスが自律神経のバランスを狂わせ、中途覚醒の原因になることも珍しくありません。
無呼吸症候群
正確には「睡眠時無呼吸症候群」といい、睡眠中に何度も呼吸が止まる症状のことを指します。
睡眠中に呼吸が何度も止まることで、睡眠の質の低下や、寝不足などの症状が起こります。
また、血液中の酸素が不足することで、血管、心臓、脳などに負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる重大な病気の原因になる場合もあるのです。
夜間頻尿
排尿のために頻繁に起きる状態を「夜間頻尿」といいます。
排尿のたびに何度も起きるので、睡眠の質が低下していき、慢性的な不眠不足の原因に。
一般的に、夜間の排尿が2回未満なら正常とみなされますが、生活の質に著しく影響を与えている状態を指します。
夜間頻尿が起こる背景には水分の過剰摂取、飲酒、服用中の薬の影響や、膀胱炎などの病気が隠れている場合があります。
ホルモンバランスの崩れが原因で起こる不眠が続く場合は一度診療を

更年期の女性は、女性ホルモンであるエストロゲンが低下し、体に様々な不調が起こります。
不眠症状も代表的な症状のひとつで、エストロゲンの不足がセロトニンやノルアドレナリンなど、精神の安定に関わる神経伝達物質の機能低下を招き、ストレスや不安など、不眠を引き起こす原因に挙げられます。
更年期症状が気になる場合は、なるべく早いうちに医療機関で診てもらいましょう。
診療科は、婦人科を受診することをおすすめします。
精神的な症状がつらいと感じる場合は、心療内科や精神科も選択肢に入れてください。
かかりつけ医がいる場合はそちらに相談してみるのもいいでしょう。
更年期の不眠を改善するセルフケア

不眠の原因が更年期症状由来によるもので、ある程度症状が軽い場合、セルフケアを行うことで症状を軽減できる場合があります。おすすめの4つのセルフケアについてご紹介します。
適度な運動
適度な運動を行うことで、体を疲労させ、入眠しやすくすることで不眠症状を和らげましょう。あまり激しすぎない運動にすることが大事です。軽めのジョギング、ウォーキング、水泳などの有酸素運動を行い、慢性的な運動不足を解消しましょう。
運動で体温を上昇させると、その後の体温低下で寝つきやすくなります。
運動するタイミングとしては就寝から3時間前くらいに軽めの運動を行うのが最適です。
イソフラボンを取ってみる
イソフラボンとは、大豆に含まれる成分のことで、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きを期待できます。
イソフラボンは大豆に豊富に含まれるので、豆腐、納豆、味噌など、大豆を原料とする食品を積極的に摂取することがおすすめです。
眠る環境を整える
入眠しやすい環境を作り、心身ともにリラックスさせることで、睡眠の質を向上させましょう。
とくにおすすめなのは、ラベンダー系のアロマオイルを使ったリラックス方法です。
ラベンダーは鎮静効果があり、気持ちの高ぶりを落ち着かせることで、スムーズな入眠を期待できます。
外部の騒音が気になる方には、音を吸収、反射する素材でできている防音・遮音カーテンがおすすめ。
一般的なインテリア、家具用品店でも販売されているので、簡単に手に入れることができます。
漢方薬を試す
「更年期の不眠症状を根本から改善したい」
「いろいろと試したが症状が改善しない」
「西洋薬は一度飲み始めたら、やめられないのではないかと不安」
そんな方には、医薬品として効果が認められている漢方薬がおすすめです。
漢方薬は自然にある植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られているため、 一般的に西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。
また漢方薬が目指すのは苦痛を和らげるための対症療法ではなく、根本的な解決です。体質の改善に働きかけることのできる漢方薬は、「同じ症状を繰り返したくない」という思いに応えてくれます。
「バランスの取れた食事や運動などを毎日続けるのは苦手」という方も、症状や体質に合った漢方薬を毎日飲むだけなので、手間なく気軽に継続できます。
更年期の不眠に対処する場合、「自律神経の乱れを整える」「精神の高ぶりを鎮めて寝つきをよくする」「血流をよくして中枢神経の機能を回復する」「栄養を全身に届けて、心と体を元気にする」などの作用を期待できる生薬を含む漢方薬を使用しましょう。
更年期の不眠の対策におすすめの漢方薬
・酸棗仁湯(さんそうにんとう):血流をよくして精神を安定させ、ストレスや疲労による精神の興奮や緊張を和らげ、不眠を改善します。
・抑肝散(よくかんさん):エネルギーや栄養を補い、イライラや不安などの神経の高ぶりを抑えて、不眠や神経症に働きかけます。
ただし、漢方薬を選ぶ際にはご自身の体質に合ったものを選ぶことが大切です。
体質に合っていない場合は、効果が出ないだけでなく、副作用が起こることがあります。
購入時には、できる限り漢方に精通した医師や薬剤師等にご相談ください。
「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。
スマホで気軽に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスも登場しています。
AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。
お手頃価格で自宅まで郵送してくれるため、手軽で便利です。
不眠対策は生活習慣の改善から

不眠の主な原因には中途覚醒、無呼吸症候群、夜間頻尿などが挙げられ、これらの背景には更年期症状が関係している場合があります。
今回ご紹介したセルフケアを行い、生活習慣を見直すことで不眠を和らげていきましょう。
<この記事の監修者>

碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・漢方薬生薬認定薬剤師
/ 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=221432a9sera0245&utm_source=sarai&utm_medium=referral&utm_campaign=250308
イラスト:にゃたり
