文/鈴木拓也

筆者は、長年の頭痛・肩こり持ち。
普通のセルフケアでは治らないので、整体師に行ったところ、「見事なぐらいのストレートネックですねぇ」と言われ、驚くとともに、ちょっとうろたえた。
「ストレートネックは、若い人がなるもの」と思い込んでいたからであるが、昨今は全年代で、首がこの状態になっている人が増えているという。そして、こうした首の問題が、頭痛・肩こりをもたらすことも多いそうだ。
それどころか、腰痛や眼精疲労なども、首の問題が発端となることがある。そう言うのは、整体師・看護師の能瀬千恵さん。能瀬さん自身も、若い頃はストレートネックに悩み、探究の末にセルフケアのメソッドを考案。自力で治した経験を持つ。今では、同じ悩みを持つ多くの人の症状を改善に導いている。
その能瀬さんが、このたび著書『1日1分で身体が整う首のセルフケア』(自由国民社 https://www.jiyu.co.jp/shumiseikatsu/detail.php?eid=04334&series_id=s10)を上梓。誰でも、首の問題に対処できるセルフケアが満載の1冊となっている。今回は、その一部を紹介しよう。
腕の重さを感じてみる
まず簡単で、初歩的なチェックから。
壁に寄りかかるように立ち、かかと、お尻、肩を壁につけてみよう。
このとき、後頭部が壁についているだろうか? もし、ついていなければ、「首からクレームが来ている状態」だ。
こうなるのは、スマホやパソコンを見ている時間が長いとか、遠くを見る機会が少ないといった、好ましくない生活習慣の積み重ねが原因。そのせいで、頭が前に落ち、ストレートネックとなり、不調に見舞われることになる。
「後頭部が全然つかなくて、自分は重症ではないか」と思っても大丈夫。本書にあるワークを1つずつ行うことで、元に戻っていく。
例えば、「首の土台をつくろう」という3つのワークがある。これは、首が無駄に前に出ている状態を改善するものだ。
その1つ、「腕の重さを感じてみよう」というワークを以下の要領でやってみよう。
1. 普段どおりに腕をぶらんと下げる。
2. 腕の重さを感じてみる(片腕で体重の約6%の重さがある)
3. 腕の重さで「引っ張られている」肩の感覚を味わう。

小さく動かすほうが効果は高い
腕の重さを感じるワークの後には、腕の重さから肩を解放するワークと、大胸筋を開くためのワークが続く。
いずれも、ごくゆっくり小さく肩を動かすもので、「本当にこれで効果あるの?」と不安になるかもしれない。大きく動かすストレッチのようなやり方が、いいのではないかと、疑問に感じる人もいるだろう。
この点について能瀬さんは、次のように説明する。
大きく動かすと、身体の外側にある大きな筋肉が動きます。反対に、ミリ単位でちいさくちいさく動かすと、大きな動きでは動かない、身体の中心の、骨に近い部分にあるちいさな筋肉が動き出します。(本書62~63pより)
このほうが、首が本来の位置に戻るのを助ける働きがあるそうだ。逆に、大きく動かしてしまっては、「傷口に塩を塗るようなもの」だとも。こうした細かい動きのワークを、能瀬さんは、「ちぃゆら体操」と呼んでいる。
ゆっくり動かすことで首の位置を戻す
「ちぃゆら体操」を、もう1つ取り上げよう。ストレートネックとまではいかないまでも、顔・首が前に出てしまっている人におすすめの方法だ。
1. 顔は真正面を向く。
2. 首を上下にゆっくり動かす。
3. 首を左右にゆっくり向ける。
4. 顔を前後左右にゆっくりスライドさせる。
最初は肩も一緒に動いてしまったり、4.が難しいと感じる人も多いだろう。しかし、ゆっくり動かしているうちに、だんだんと首だけ動かせるようになってくるはずだ。
こうした首そのものへのアプローチとは別に、いくつかのアドバイスもある。
その一つが、食いしばりだ。これが習慣化していると、顎・頬の筋肉が過緊張となり、首も緊張していく。これも、頭が下がり気味になる一因となる。
食いしばりと聞くと、上下の歯を強く噛みしめているイメージがある。が、1日に20分でも上の歯と下の歯が当たっているだけでも、立派な食いしばりだという。
その対策として、下あごと上あごを前後左右にわずかにゆらすワークもある。やり方の詳細は本書に譲るが、食いしばりがクセになっている人には効果てきめんだ。
* * *
このように、本書のセルフケアは、簡単で短時間でできるものばかり。ストレートネックや肩こりを改善したくても、習慣化が苦手とか、時間がかけられない人にピッタリの内容となっている。「今までいろいろやったけど続かなかった」のであれば、ぜひチャレンジしてほしい。
本書内イラスト:伊東昌美
【今日の健康に良い1冊】
『1日1分で身体が整う首のセルフケア』

定価1595円
自由国民社
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。
