遺言書

「うちには遺言を遺すほど財産は無い」、「遺言書と聞くと堅苦しいイメージがある」と思っている方が多いのではないでしょうか。多額の財産を所有している人は、遺言もセットで相続を考えています。一方で、相続税がかからない世帯の人は、遺言も不要なものと位置づけされているように思えます。。

「遺言が必要な人=多額の財産がある人」というイメージが正しくて、少額の財産しかない世帯の人に遺言は不要なものでしょうか? 今回は、そもそも遺言書は残すべきか、また残すのであればどのようなプロセスを踏めばいいのかをお話したいと思います。

目次
遺言書とは?
遺言書の種類
遺言書の作成
遺言書の効力は?
まとめ

遺言書とは?

法律上、遺言を遺す義務は無く、遺言書の作成は任意となっているので、遺言をするかしないかは個人の自由です。
しかし、相続が発生した場合、「残された財産を誰がもらうのか?」という問題は、財産が多額であるかどうかは関係なく、すべての相続について回ることです。遺言書は、遺産分割で家族がもめないための重要な意思表示です。

遺言とは

遺言とは、相続財産の承継に関するご自身の最終的な意思表示であり、相続が発生した後にご家族が円満な関係を継続できる内容であるかどうかが重要です。

遺言書とは

遺言書は、遺産の承継に関する意思表示を書き残した書面であり、法律で定められた書式に沿って作成をする必要があります。

遺言書の種類

遺言書は大きく「普通方式」と「特別方式」に分けられ、「普通方式」はさらに「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」と3つの種類に区分されます。ここでは、よく利用されている普通方式の3種類についてご説明します。

自筆証書遺言

遺言者を自分で作ることができるのが、自筆証書遺言です。紙とペンと印鑑があれば作成できる、最も簡単な方法と言えるでしょう。しかし、本人が書いたものかを証明することが難しい、遺言書が発見されない、などの恐れもあります。作成の流れは、以下のとおりです。

(1) 遺言書本文を自筆する
(2) 作成日付を記す
(3) 遺言者本人が署名捺印をする

また、訂正や加筆、削除をするときにも決まりがあるので、決まったルール以外で訂正などを行うと、遺言の効果が無効になってしまいます。

公正証書遺言

遺言者が口頭で述べたことを公証人が直接聞いて作成するのが、公正証書遺言です。公正証書遺言には、二人以上の証人の立ち会いが必要となり、遺言者の意思を公的な立場で保証してもらえるメリットがあります。

また、公正証書遺言の原本は「公証役場」に保管されるため、遺言書の偽造、隠匿の危険はありません。費用はかかりますが遺言の方式としては、最も安全で確実といえます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書の内容を証人に知られないというメリットがある一方、公証人が遺言の内容までを確認をするわけではないので、遺言としての要件が欠けた状態である可能性は残ります。

封印した上で公証役場に持参し公正証書にするので、保管については安全です。秘密証書遺言の作成の方法としては、遺言を作成し封印した状態で、公証役場へ持っていきます。 公証人1人と証人2人以上の立ち会いが必要です。

遺言書

遺言書の作成

遺言書の作成にあたって、自分で作成するのか、専門家に依頼するのか、それぞれの論点を見ていきましょう。

自分で作成する

自分で遺言書を作成する場合には、自筆証書遺言が最も適しています。自筆証書遺言は自分だけで作成できる反面、形式を守っていなかったり、相続に関する知識が不足していたりすると、かえって相続人の争いのもとになる可能性があります。最低限、次の3つのポイントに注意しましょう。

▷ポイント1:遺言の形式を守る
自筆証書遺言は、本文、日付、氏名を自書し、押印しなければ、有効なものとはなりません。財産目録については、自書でない財産目録の添付も認められますが、2019年1月13日以降に作成された遺言書にしか適用されないので注意しましょう。また、遺言書に加除訂正を行うときは、変更箇所を指示し変更した旨を付記して、さらに署名と変更箇所への押印が必要です。

▷ポイント2:文面を正確に記載する
たとえ形式的な要件を満たしていても、内容が曖昧な遺言書は無効となる可能性があります。そのため、文面は正確に記載し、解釈が分かれるような表現にならないよう端的に記載します。

▷ポイント3:遺留分を侵害しないようにする
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた最低限の相続分のこと。遺留分を侵害する遺言書は、遺言書の内容どおりの相続が実現しないばかりか、相続人同士の争いのもとになるので、特定の人に財産を多く遺したい場合は注意が必要です。

専門家に依頼する

専門家に依頼する場合には、「弁護士」「司法書士」「行政書士」を通じて公正証書遺言を作成してもらいましょう。遺言書が公証役場で保管されるため、紛失や偽造のリスクがありません。また、形式的な不備によって無効となるリスクもありません。

公正証書遺言は、公証人への手数料と専門家への報酬が必要です。内容に応じて金額は変動しますが、最低でも20~30万円程度は必要になることが多く、手間がかかるものであればそれ以上になることも。作成前にしっかりと費用を確認したほうがいいでしょう。

遺言書の効力は?

遺言書の効力が認められるためには、遺言書を作成するときに以下の点に留意しなければなりません。

・法定の方式で行われた遺言であること
・日付の新しい遺言書の内容が優先される
・自己保管していた遺言書を相続人が発見した場合、家庭裁判所の検認が必要

効力を持つ期間

遺言書には、有効期限というものはありませんので、作成する場合にはしっかりと内容を検討する必要があります。

まとめ

相続争いのケースは、相続税がかからない世帯において、年々増加しているのです。税金が発生しないからと言って、遺産分割の問題まで無関係になるわけではありません。家族のために残してきた財産で、家族同士が争ってしまうことほど悲しいことはないのです。

遺言書を作成することで、相続に関する円満な着地点を提供してあげることが、残された家族の為に行える最後で最大の責任と言えるでしょう。

●構成・編集/末原美裕(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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