布団に入ってもなかなか眠りにつけない……、いったん眠りについても夜中に何度も目が覚めてしまう……、起床予定の時間よりも早く目覚めて、そのあと眠れない……、眠りが浅く熟睡した感じがしない……。

睡眠の悩みを抱える人が多く、ストレスフルな現代社会において、日本人の睡眠時間は世界で最下位というデータもあります。あなたも年齢を重ねるとともに、そんな睡眠への不満が高まっているのでは?

これまで2万人以上の睡眠に悩む人を治療してきた睡眠専門医・白濱龍太郎医師の最新刊『「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK』(主婦の友社)は、そんな「眠れない人」に手を差しのべてくれる一冊です。今回は、眠りのメカニズムと、睡眠が私たちにとっていかに重要なことなのかをご紹介します。

文/白濱龍太郎

どうして不眠になるのか

私たちが眠れなくなる原因には、さまざまな要素があります。特に長期間にわたって不眠に悩む人に多い原因が、不安や緊張、ストレスです。眠れない期間が長くなると、布団に入ったときに「今日も眠れなかったらどうしよう」と不安を感じたり、「今日は早く寝なくては」と逆に緊張を招くことがあったりします。このような不安や緊張、ストレスは、心身の働きを活発にする自律神経である交感神経を刺激して、脳の覚醒を高めます。すると、余計に眠れなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。こうした不眠対策で最も大切になってくるのが、生活習慣の見直しでしょう。

例えば、睡眠に悩みのある人は、寝る直前までスマートフォンを操作したり、テレビを見たりすることは避けてください。この行為は脳に強い刺激を与えるので、不眠を招きかねません。また、夕食をとる時間、お風呂に入る時間なども関係してきます。

そこでまずは、下のチェック項目を見ながら自身の最近の状態を振り返ってみてください。3つ以上当てはまるようなら、睡眠の質が悪くなっている兆候です。すぐに病気というわけではありませんが、放っておくと脳や心は確実に疲弊していきます。すると、頑張りたいときに頑張れなくなったり、昼間にまったくやる気がなくなったり、と困った状態になるおそれがあるのです。これを防ぐためにも良質な睡眠をとる必要があります。

最近の睡眠の質をチェック!

直近3日間の睡眠を振り返りながら、以下の項目で当てはまるものをチェックしてください。3つ以上当てはまったら睡眠の質が悪くなっているサインです。

□眠る直前までスマホを見ている
□よく電気をつけたまま寝落ちする
□22時以降に晩ごはんを食べる
□休みの日は平日よりも1時間以上睡眠時間が長い
□寝る直前に歯をみがく
□朝起きてもカーテンを開けない
□靴下をはいたまま寝ている
□打ち合わせ中に眠くなる
□電車で座ったとたんに寝てしまう
□布団に入っても30分以上眠れないことがある
□睡眠時間は足りているのに、朝すっきり起きられない

睡眠は、脳のクールダウンのために絶対必要!!

そもそも、人はなぜ眠らないといけないのでしょう。体を動かしたときと同じように、脳も活発に働くと多くのエネルギーを消費し、その際に熱を発します。それに伴って体温も起きてからお昼までの間に急激に上昇し、その結果、日中はシャキッと覚醒した状態になります。ところが、脳神経はとても熱に弱いので、ずっとそのままではオーバーヒートしてしまいます。したがって、夜にはその働きを低下させてクールダウンする必要があります。これが、睡眠が必要なもっとも大きな理由です。日中は高くなっている体温が夕方から徐々に下がり、それとともに脳の働きも低下して、夜に眠気がやってきます。

しかしながら、眠っている間も脳は働いています。その働きの1つが記憶の定着。人間は日中に覚えたことを眠っている間にしっかりと記憶し定着させています。さらに、ぐっすり眠ることでしか行なわれないのが、日中の活動で損傷した神経ネットワークの回復です。浅い睡眠だけでは時間が短く、この機能がうまく働かないので、取得した情報が脳の中でうまく整理されなかったり、記憶力が低下したりします。つまり、脳は睡眠中にクールダウンしながら、日中に取得した記憶情報を整理しているのです。

また、眠っている間に、脳の老廃物の排出もしています。例えば、アルツハイマー型認知症の発症に深く関わっているとされるアミロイドβという物質を睡眠中に体外に排出しています。このような意味でも、睡眠は人間にとって欠かせないものなのです。

*  *  *

「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK
著/白濱龍太郎
主婦の友社 1,540円(税込)

白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
医学博士、産業医。医療法人RESM新東京・新横浜理事長。日本オリンピック委員会・医科学強化スタッフ、TOKYO2020選手用医師。日本睡眠学会評議員、総合診療専門医、社会医学系指導医。福井大学客員准教授。
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を開設。睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠にまつわる病気を適切に診断するために、最新の医療機器を導入し、日本睡眠学会認定施設として専門医療を提供している。主な著書・監修書に『1万人を治療した睡眠の名医が教える 誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンスが1冊で手に入る 熟眠法ベスト101』『ぐっすり眠る習慣』(以上、アスコム)、『こんなに怖い 図解 睡眠時無呼吸症候群』(日東書院本社)など多数。

 

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