布団に入ってもなかなか眠りにつけない……、いったん眠りについても夜中に何度も目が覚めてしまう……、起床予定の時間よりも早く目覚めて、そのあと眠れない……、眠りが浅く熟睡した感じがしない……。

睡眠の悩みを抱える人が多く、ストレスフルな現代社会において、日本人の睡眠時間は世界で最下位というデータもあります。あなたも年齢を重ねるとともに、そんな睡眠への不満が高まっているのでは?

これまで2万人以上の睡眠に悩む人を治療してきた睡眠専門医・白濱龍太郎医師の最新刊『「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK』(主婦の友社)は、そんな「眠れない人」に手を差しのべてくれる一冊です。今回は、寝つきがよくなる&朝までぐっすり眠れる毎日の習慣や心がけをご紹介します。

文/白濱龍太郎

睡眠ホルモンの分泌を促すためには、朝食が重要に

朝食をきちんととると、必要なエネルギーが体に取り込まれ、消化器官が活動を始めて脳が働き、体温が上がります。朝からバイタリティあふれる活動をすれば、夜には脳と体が疲れを回復するために休息するので、自然と眠りにつくことができるのです。 

質のよい睡眠をとるためには、朝食で何を食べるかも重要です。そこでとってほしいのが、トリプトファンという必須アミノ酸。トリプトファンは、体内に入ると、精神を安定させる働きのあるセロトニンというホルモンに変わる重要な栄養素ですが、人は必要な量のトリプトファンを体内で生成することができないので、食品からとる必要があります。

トリプトファンをたくさんとることで、セロトニンはもちろん、セロトニンを原料とする睡眠ホルモンのメラトニンも多く分泌され、眠りにつきやすくなるのです。このトリプトファンが多く含まれている食材は大豆製品や赤身の魚、牛肉や豚肉、卵、乳製品、ナッツ類など。そのため、朝食のメニューは、ごはんと、トリプトファンを多く含む納豆、干物の魚、卵などを一緒に食べるのが良質な睡眠にとってベストといえるでしょう。ただ、どうしても時間がなかったり、食欲がわかなかったりしてしっかり朝食がとれない日には、せめてみそ汁1杯だけでも飲むようにしてください。大豆食品であるみそには、トリプトファンがたっぷり含まれています。

眠っている間にアミノ酸で回復力を高める

睡眠中の体を修復し再生する材料として欠かせないのがタンパク質。これを構成するアミノ酸の中でも、睡眠の質を高めるために不可欠なのが以下の3つです。

1つめは、トリプトファン。セロトニンやメラトニンの原料となる必須アミノ酸ですが、人の体内ではつくられないので食事からとる必要があります。これを多く含む食材は、鶏むね肉、牛肉、牛乳、チーズ、卵、バナナ、大豆製品、ナッツなどです。2つめは、GABA(ギャバ)。心身をリラックスさせ、不眠を改善する効果があります。発芽玄米、雑穀類、トマト、ブロッコリースプラウト、カカオなどの食材に多く含まれています。3つめは、グリシン。体の深部体温を下げる働きがあり、眠るためのスイッチをオンにしてくれます。エビ、カニ、イカなどに多く含まれています。

また、睡眠と密接な関係にある免疫力を上げるための栄養素として重要なのが、ビタミンD。鮭、サバ、マグロなどの魚類やきくらげなどのきのこ類にも含まれています。さらに、睡眠のリズムを整える栄養素として、ビタミンB12があります。カキ、シジミ、アサリ焼きのり、レバーなどに多く含まれています。こうしたアミノ酸やビタミン以外にも、睡眠をサポートしてくれるサプリメントの活用も手です。体が熱くなって眠れない人には、グリシン配合のサプリもよいでしょう。血管拡張作用があり、深部体温を下げてくれます。

睡眠をサポートするものとして、睡眠薬という選択肢もあります。最近は薬の改良が進んで副作用が軽く依存性の少ないものも増えてきたので、医師や薬剤師に相談してみてください。
※睡眠薬の使用には注意が必要です。必ず医師の処方を受けてください。

寝る直前に歯はみがかない

寝る準備を整え、最後に歯みがきをしてから布団に入るという人は多いのではないでしょうか。しかし、できればその習慣はすぐに見直してください。なぜなら、就寝直前の歯みがきは、ぐっすり眠るのを妨げる危険性があるからです。

眠りやすくなるためには、メラトニンの働きが欠かせませんが、歯ぐきが刺激されると、メラトニンの分泌量は減るといわれています。とはいえ、寝る前には歯をしっかりみがきたいし、口の中をリフレッシュさせたいという方も多いはずです。それでは、夜の歯みがきはいつしたらいいのでしょうか? 理想は就寝の1時間前です。衛生面の問題はクリアできますし、不快感を抑えることもできます。それでも口の中を寝る前にさっぱりさせたいという方は、水でうがいをしましょう。

これを逆手にとって、日中の眠気対策にする方法もあります。ランチのあとに歯みがきをすれば、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が抑えられ、午後もシャキッと過ごせます。昼過ぎにやってくる睡魔を少しでも抑えたいなら、ランチ後に歯みがきをする習慣をつけるのもいいでしょう。

また、ぐっすり眠るためにも、布団に入る前にはしっかりリラックスして、副交感神経を優位にしておきたいところです。その方法としておすすめしたいのが、寝る前に20分ほど音楽を聴くこと。落ち着いた自律神経を整えるような音楽を聴きましょう。今は動画配信サイトでも睡眠によい音楽が配信されています。

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「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK
著/白濱龍太郎
主婦の友社 1,540円(税込)

白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
医学博士、産業医。医療法人RESM新東京・新横浜理事長。日本オリンピック委員会・医科学強化スタッフ、TOKYO2020選手用医師。日本睡眠学会評議員、総合診療専門医、社会医学系指導医。福井大学客員准教授。
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を開設。睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠にまつわる病気を適切に診断するために、最新の医療機器を導入し、日本睡眠学会認定施設として専門医療を提供している。主な著書・監修書に『1万人を治療した睡眠の名医が教える 誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンスが1冊で手に入る 熟眠法ベスト101』『ぐっすり眠る習慣』(以上、アスコム)、『こんなに怖い 図解 睡眠時無呼吸症候群』(日東書院本社)など多数。

 

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