文/鈴木拓也
高齢化社会を反映してか、世の中には認知症の予防になるという「脳トレ」がたくさんある。
それらは、パズルや計算を解くなどして脳を刺激するものだが、面倒であったり時間を要したりと、意外にハードルが高い。
効果が立証された唯一のトレーニング法
このたび、そうした課題をクリアした脳トレの書籍『1日3分見るだけで認知症が予防できるドリル』(SBクリエイティブ)が刊行されたので紹介しよう。
著者は、二本松眼科病院の平松類副院長。視力を改善するガボールパッチ(ガボールアイ)を日本に広めた眼科専門医として、ご存知の方も多いかもしれない。
本書は、有効視野を鍛える「脳知覚トレーニング」が多数掲載されたドリル集となっている。このトレーニングは、現時点で唯一、科学的に効果が立証されている、薬を使わない認知症予防法だという。
例えば、南フロリダ大学の研究では、認知症の発症率が29%低減したというエビデンスが出ており、しかも効果が10年間持続するとも。欧米では、「数年前から一般向けにも普及」しているそうだ。
平松類副院長は、このトレーニングに効果がある理由として、有効視野を鍛えることで「脳が活発に働かざるを得なくなる」という点を挙げる。有効視野とは、「周りに何があり、何が起こっているか、なんとなく判別し、適切に対処できる視覚の範囲とその能力」を意味する。この視野を改善する(広げる)と、脳の広範な部位が活性化し、脳の老化を防ぐわけだ。
1回3分で有効視野が改善
詳しい解説は本書に譲るとして、さっそく本書にあるトレーニングを1つ取り上げよう。
やり方は次のとおり。
目と画像の距離を20cmほど離し、中央の「LOOK」を両目で見て、そこから視線を動かさないようにする。メガネやコンタクトレンズを装用しているなら、つけたままで。その状態で、以下のクイズを解く。
Q1:赤の円上で1つだけ違うマークは、AからDのどのゾーンにある?
Q2:赤の円上で1つだけ違うマークは、何のマーク?
Q3:緑の円上で1つだけ違うマークは、AからDのどのゾーンにある?
大きさが重要なので、実際にトレーニングをする場合、スマホでなくパソコンの画面でやってみよう(ちなみに本書の実寸は縦横18cmの正方形)。
本書には、バリエーションをさまざまに変えて28種類の画像がある。1日1つ、1回3分、4週間続ける。あとのページのものほど、円は少しずつ大きくなって難易度が上がり、あわせて有効視野も鍛えられていく。全部をやり終える頃には、有効視野ははっきりと改善され、認知症の予防へとつながっていく。
また本書には、新聞紙や硬貨を使った「脳知覚トレーニング」も載っている。気分を変えて別の種類のトレーニングをやってみたいとか、終日の外出で本書が手元にないときは、こちらにもチャレンジしてみるとよいだろう。
体験談を読むと、「ニュースや人の話を忘れにくくなりました」(60代男性)、「一日中クリアな頭で過ごせるようになりました」(40代女性)など、効果のほどがわかる。「脳トレをやってみたい」とお考えの方に、おすすめしたい1冊だ。
【今日の健康に良い1冊】
『1日3分見るだけで認知症が予防できるドリル』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。