“スーパー主婦”の朝食は和風と洋風のふた通り。それぞれをパターン化することで迷いなく、手早く調えられるという。

【井田典子さんの定番・朝めし自慢(和風の場合)】

盆上の前列中央から時計回りに、紫黒米入りご飯、納豆(梅干し)、ヨーグルト(マーマレード)、オレンジ、卵焼き、ジャコピーマン、ほうじ茶、味噌汁( 冬瓜・油揚げ・若布 ・青菜)、盆の向こうは糠漬け( 胡瓜・茄子・皮付き人参)。梅干し、ヨーグルト、マーマレード、糠漬けはすべて自家製。糠漬けの胡瓜と茄子は庭の菜園で採れたものだ。

【井田典子さんの定番・朝めし自慢(洋風の場合)】

丸皿の左から時計回りに、胡麻入りパン、ゆで卵(マヨネーズ)、ピクルス、鶏ハム、プルーン、キャロットラペ。丸皿の外左から時計回りに、ヨーグルト(マーマレード)、林檎 、牛乳。パンと鶏ハムは自家製。パンには切れ込みが入っていて、好みの具をはさんでいただく。林檎は皮ごと食したいので、スターカット(横輪切り)にするのが井田流だ。

朝食用の常備菜は野菜が中心。手前から時計回りに、ジャコピーマン、キャロットラペ(胡桃、イタリアンパセリ)、ピクルス。ピクルスは玉葱、パプリカ、胡瓜、カブ、キャベツなどの野菜の他、ひよこ豆も美味だ。

朝5時半~6時に起床。庭仕事を終え、6時半からラジオ体操。朝食は7時頃だ。「在宅ワークになって、昼食は毎日夫の担当に。冷蔵庫にあるもので作るパスタは絶品です」と井田典子さん。夫の芳人さん(62歳)と。

庭の菜園の野菜を次々と漬ける糠床は芳人さんが管理。2日に一度はかき混ぜ、塩や唐辛子を追加する。「僕は理系なので、実験をするように楽しんでいます」と芳人さん。

10年ほど前、NHKの情報番組『あさイチ』などで“スーパー主婦”として活躍した井田典子さん。今は「ハウスキーピング協会」の“整理収納アドバイザー”という資格を得て、片づけの手伝いや講演などを行なっている。

その原点は、「友の会」にあるという。これは羽仁もと子創刊の『婦人之友』読者の全国組織で、
昭和5年結成。家事、家計、育児などを勉強する集まりだ。

今、所属している横浜友の会の最寄り(近隣に住む)のメンバーと8か月分の家計を点検。23歳で実家を離れて38年、友の会は井田さん(前列右)にとって主婦としての育ての親だ。

「母が広島友の会会員で、私が23歳で結婚して実家を離れてから1年間、『婦人之友』を送ってくれた。これは私も友の会に入って、母の代わりに教えてもらいなさい、ということだと思いました」

昭和35年、広島県生まれ。父は中学の英語教諭だったが、退職後は原爆の語り部として各国を巡った。10歳の時に原爆で実母を亡くした母は、父と共に核廃絶を目指す平和活動家を支援する活動を開始。海外の平和活動家のホームステイを30年近く受け入れてきた。

「母は英語を話せないけれど、毎年夏に訪れるそんな外国の人たちを手作りパンとピクルスでもてなしていた。パンもピクルスも婦人之友や友の会で学んだもの。私は両親の志を引き継ぐほどの平和活動はできないけれど、片づけで人の心を平らにすることも平和の第一歩だと考えるようになりました」

平和との共存は遠くの理想ではない。身近な生活習慣を見直すこともまた、平和へと繋がるのだ。

広島の実家では、毎年8月6日の前にホストボランティアとして延べ100人の外国の人たちを受け入れていた。後列左から弟、父、井田さん、カザフスタンの平和活動家、前列の子どもたちを抱いているのは右から母、カザフスタンの平和活動家ふたり(1998年)。

パターンが自分を自由にする

“スーパー主婦”の朝食の極意は、そのパターン化にある。

「夫はご飯、私はパン党。そこで朝食はご飯とパンを1日置きと決め、しかも和風も洋風献立もパターン化したのです。すると迷いなく動けるせいか、あっという間に朝の食卓が調います」

パターン化で気をつけている第一は、1日400gの野菜を目標に、そのうち朝食で100gを摂ることだ。畢竟、朝食用の常備菜は野菜が中心。手作りの糠漬けも、野菜補給の助けとなる。

第二に、梅干しや糠漬け、ヨーグルトなどの発酵食品を欠かさぬこと。第三に、たんぱく質やカルシウム、食物繊維を摂れる献立だ。

朝食のパターン化で時間ができ、身も心も自由になるという。

目に見えるモノを片づけるとは、目には見えぬ心を整えること

リビングダイニングから見渡した、整理収納アドバイザーのキッチン。料理や下ごしらえがスムーズにできるように、シンク回りは常に空けておくという。キッチンスポンジやたわしは、シンク手前側に収納している。
冷凍庫の下の段には買い物をした日に作り置きしたおかずや下処理した食材をラベリングしてストック。手間を貯金しておくのだ。

平成29年に整理収納アドバイザー1級の資格を取り、この5年間で数百軒以上の片づけを手伝ってきた。香港やスウェーデンなど、海外の家庭も手がけた。その片づけのプロセスは、“だ・わ・へ・し”だという。

“だ”はすべてを“出す”、“わ”は種類別・目的別に“分ける”、“へ”は使うものだけを選んで“減らす”“し”は枠を決めて出し入れしやすく“しまう”である。

「最初のすべてを出した段階で、その量の多さに皆さん途方に暮れる。この途方に暮れることが大事で、二度とこんなことはしたくないと思う。これが片づけの第一歩です。次は減らす(処分する)こと。人生は決断の連続ですから、潔く思い切ってください」

まずは、引き出しひとつから始めたい。片づけとは、その人の来し方を掘り起こし、今後の生き方を選ぶ作業である。井田さん自身、長男が荒れていた時期に、引き出しひとつを片づけると、進むべき道が分かったようで、心がふっと軽くなったという。目に見えるモノを片づけることで、目には見えぬ心が整うのである。

2017年、NHKの仕事で「片づけ紀行」と題してスウェーデンを訪れた。片づけの途中の午前10時と午後3時、家族と“フィーカ(カフェタイム)”を楽しむ井田さん。
休日の楽しみは夫妻揃っての街歩きや山歩き。芳人さんが気分転換にと、外に連れ出してくれたのがきっかけだ。今年8月には八ヶ岳の北横岳に登った。
著書右から『「ガラクタのない家」幸せをつくる整理術』は60歳を前に踏み切った二世帯住宅を公開。『人生を肯定できる片づけ』はなりたい自分と暮らしへ踏み出すヒント集。『ピカピカだいさくせん!』は初の絵本で、絵はいわさきちひろの孫・松本春野さん。

※この記事は『サライ』本誌2021年12月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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