文/鈴木拓也

「年も年だし、健康を考えて、食事には気を使い、運動も始めた」といった声を最近よく聞くようになった。

にもかかわらず、メタボ体型のままだったり、健康診断でひっかかるなどして、自らが行っているダイエットに「効果はあるのだろうか」と、不安を感じる人も少なくない。

そのお悩み、もしかすると「“時間”という視点が欠けている」せいかもしれない。そう指摘するのは、早稲田大学理工学術院の柴田重信教授だ。

柴田教授は、食事と時間の関係を研究する時間栄養学の第一人者。これは近年注目を浴びている学問分野で、著書『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社)で、わかりやすく解説している。

今回は本書から、時間栄養学の視点でのダイエット術について紹介しよう。

プチ断食は食べる時間帯に注意

幅広い世代で“プチ断食”が流行している。

これは1日のうち十数時間、まったく食べない時間帯をもうけるというダイエット法だ。

この絶食時間は、16時間という設定がよく知られている。つまり、残る8時間の枠内で、その日の食事を済ませることになる。

本書には、30代半ばのAさんの事例が載っている。Aさんは、午後2時に社員食堂でその日最初の食事をし、帰宅後の午後8時から10時にかけて夕食・晩酌をするという16時間のプチ断食を続けている。

この生活を3か月続けたが、期待ほどには体重は減らなかったそうだ。
柴田教授は、食べる時間帯が遅い点が問題だとし、次のように解説する。

このような生活パターンのいちばんの問題は、明らかに体内時計のリズムに合っていないことです。体内時計には約24時間周期のリズムがあって、時間によって体の働きや反応が異なります。
たとえば、一日の活動を始める朝は、食事としてとった栄養をエネルギーに変える必要がありますが、ゆっくりと体を休める夜は、使いきれなかったエネルギーを脂肪としてため込もうとします。(本書29pより)

柴田教授は、プチ断食自体は否定しない。しかし、Aさんの場合、朝食抜きで、かつ夜遅くまで食べているのが、体重が減らない原因だったようだ。

時間栄養学の観点では、朝に食べることで、日中の活動にむけた体内時計が動き出すという。まずは、この点を肝に銘じておこう。

朝の糖質で体内時計が動きだす

では、朝食は何を食べるのがベストの選択だろうか?

これについても本書で詳しく解説がなされている。

結論から言うと、体内時計を動かす力が大きいのは「インスリンが出やすい食べ物」ということがわかっています。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。ご飯やパンなどの糖質をとるとブドウ糖に分解され、血糖値が上がりますが、インスリンはこの血糖値に反応して分泌されます。肝臓にある末梢時計は、このインスリンの量が増える事で動き出します。だから、朝食には、血糖値が上がりやすく、インスリンが出やすいものが適しているのです。(本書94~95pより)

昨今は、糖質を目の敵にする人が多い。たしかに、とり過ぎは問題になるが、一方で重要な栄養素でもある。適度な糖質の摂取は、意識した方がよさそうだ。逆に、インスリンの働きは夜になると弱くなるため、夕食では糖質を控えめにする。

さらに、魚の脂肪分やタンパク質も体内時計を動かしやすいそうで、ご飯と魚という昔ながらの和食が、実は時間栄養学的にも好ましいとも。

昼食については、塩分のとりすぎに注意。人間の味覚も体内時計によってコントロールされているそうで、たとえば塩味に対する感じ方は、朝が一番敏感で、時間とともに鈍くなっていく。つまり、遅い時間帯になるほど塩辛い物に鈍感になっていき、ついついしょっぱいものを食べ過ぎるリスクがあるというのだ。

その対策として、減塩を意識するとともに、野菜をとることがすすめられている。これは、野菜に含まれるカリウムが、体内に蓄積した塩分を排出する作用を持つから。

夕食については、「軽めに、なおかつ就寝の2~3時間前までに終わらせる」が基本。そして糖質や脂肪の多いものは避ける。

運動のベストタイミングは夕方

コロナ禍が引き起こした影響の1つに、運動不足解消のためウォーキングや筋トレに取り組む人が増えたというのがある。

柴田教授は、体内時計と運動の関係についても、多くのページを割いて説明している。

例えば、余分な体脂肪を減らすという点では、「夕方」に運動するのが最適だという。理由として、この時間帯は、活動性を高める交感神経の働きが、朝より良いことなどを挙げる。

これより遅い「夜」の時間帯になってしまうと、体内時計を遅らせる作用が生じて、夜型生活になりやすいので注意が必要。目安は、遅くても夜7時くらい。帰宅時は、自宅の最寄り駅より1駅手前に降り、そこからウォーキングするなど工夫したい。

そして、筋トレの場合、タンパク質を充分にとることも重要。特にシニアは、サルコペニアやフレイルを予防するためにも、積極的にタンパク質をとることがすすめられている。

筋肉は合成と分解を繰り返していますが、食事でタンパク質を多くとれば、分解される筋肉よりも、合成させる筋肉が上回り、筋肉が大きくなっていきます。高齢になると食が細くなりがちですが、それだけに良質なタンパク質を意識してとるようにしましょう(本書188pより)

タンパク質をとる時間帯にもベストタイミングがあるという。それは「朝」。鍛えるのは夕方でも、朝にタンパク質を充分にとることで筋肉の維持・発達が促されるそうだ。

* * *


本書は、時間栄養学の実用的な入門書としてすぐれた1冊。特にダイエットや運動で伸び悩んでいる人は、読んで得られるものが多いはずである。

【今日の健康に良い1冊】
『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』

柴田重信著
講談社

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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