慢性の腰痛や坐骨神経痛を改善するために、筋トレをおこなうことはとても大切です。
しかし、正しいフォームでおこなわないと、かえって痛みを招いてしまうことがあります。
今回はスクワットでよくみられる間違いと、安全な方法についてご紹介します。
間違ったスクワットが痛みの原因になった例
政村さん(60代男性仮名)は、2か月前にゴルフをした翌日から左のお尻や太ももの外側に痛みが出るようになってしまいました。
なかなか良くならないので整形外科を受診したところ、腰椎の一番下が前方にずれていて椎間板もつぶれていると指摘されました。診断としては腰椎すべり症による坐骨神経痛とのことです。
後日椎間板に注射をする簡単な手術(本人談)をおこない、1か月程度様子をみましたが痛みはあまり変わりません。
そこで以前通院したことがあった、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)を思い出し、また治療を受けたいとの連絡をいただきました。
お身体の状態を拝見すると、左の殿部、太もも、すねなどの筋肉がカチカチに緊張したり、ゆ着といってへばりつくように固まってしまっていました。
とくに脛の前脛骨筋(ぜんけいこつきん/下図)という筋肉が、異常に固くこわばっています。
どうやらこの前脛骨筋がおおもとで、そこからつながる外側広筋や腸脛靭帯といった太もも外側の筋肉や靱帯、さらに殿部の筋肉中殿筋や小殿筋まで緊張をまねき、痛みをおこしているようでした。
これは筋膜連鎖(きんまくれんさ)による症状で、関節をまたいでつながった遠くの筋肉が別の筋肉を緊張させて痛みをおこしてしまうことがあるのです。
数回の治療で前脛骨筋から腸脛靭帯や中殿筋、小殿筋などをゆるめていくと、痛みは良くなっていきましたが、いま一つ治りきりません。
なにより毎回前脛骨筋をゆるめているのに、次回来た時にはまたカチカチになっているのです。
そこで生活習慣などを詳しく聞いてみると、毎日スクワットをおこなっているとのこと。
そこでピンときた筆者は、どのようにスクワットをしているか確認させていただいたところ、典型的な間違いによって不要な前脛骨筋の筋緊張をまねいているということがわかりました。
足の指が浮くスクワットはNG
政村さんのスクワットを拝見すると、足の指が完全に浮いた状態でおこなっていました。これはかかと重心になりすぎてしまったことでおこる、よくある間違いです。
「スクワットは膝をつま先より前に出さずに脚を深く曲げる」のが基本と指導されます。
そうするとかかと側に体重をかけることになりますが、足の指が浮くほどかかとに体重をかけてしまうと前脛骨筋に過剰に負荷をかけてしまい、強く緊張させてしまうことになります。
政村さんは自己流の間違ったフォームで長い期間スクワットをしていたため、限界がきて痛みをおこしてしまったようでした。
そこでしばらくスクワットを休止してもらったところ、痛みはかなり良くなったと言います。
しかしスクワットをしないとストレスがたまってしまうとのことで、無理な負担がなく、腰痛や坐骨神経痛改善に効果的な方法を指導しました。
腰痛や坐骨神経痛に効果的なワイドスクワット
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、腰や脚に痛みのある患者さん向けのスクワット系のトレーニングとしてワイドスクワットをおすすめしています。
このトレーニングをおすすめする理由としては、膝や腰へかかる負担が少なく、ハムストリング、内転筋、殿筋、大腿四頭筋など多くの筋肉に効かせることができるからです。
また基本的にかかと重心にはならない方法なので、前脛骨筋への負担はほとんどありません。
以下を参考にやってみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVD(https://www.re-studio.jp/dvd.html)より
足を広めに開き、つま先を45度くらいに外に向けます。
下腹を引っ込めるようにお腹を締めます。
その姿勢から膝に手を置くようにしながら腰を落とします。
できれば太ももが床と平行になるくらいまで腰を落とします。そこまで落とすのが無理な場合は、膝が45度曲がるくらいまで頑張ってみましょう。
この時には普通のスクワットのように上半身を前に倒さず、上半身もまっすぐに落とすイメージでおこなってください。
そこから腰を上げていきますが、膝や太ももの力で上げないで、足を閉じる力、内ももとお尻を締める力で戻るようにおこなってください。
膝で踏ん張ってしまうと、殿筋、ハムストリング、内転筋に効きづらくなってしまいます。
内ももやお尻を意識して使うようにすると、それらの筋肉に効いてきます。
例えば大きなボールを膝の間に置き、そのボールを膝ではさんでつぶすようなイメージです。バランスボールなどをお持ちであれば、実際に膝にはさみながらおこなっても良いでしょう。
一動作をゆっくり5~10秒くらいかけ、はじめは1日に10~20回程度、慣れて来たら少しずつ回数を増やし、40~60回を目標に頑張ってみましょう。
はじめのうちは筋肉痛が出るかもしれません。その場合は1~3日に1回程度から様子を見て、徐々にトレーニング日数を増やしましょう。
※ご注意:痛みのためにこの動作ができない、またはこの動作をおこなうと症状が悪化する時はやめてください。
この記事が慢性腰痛、坐骨神経痛改善の一助になれば幸いです。
また以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
腰椎分離すべり症の治し方|痛みやしびれを改善する方法【川口陽海の腰痛改善教室 第98回】(https://serai.jp/health/1091797)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html