歳をとるというのは厄介なものですよね。周りからは、年相応に物知りなどと思われたりして……。うっかり漢字の読み方なんか間違えたりしますと、とっても恥ずかしい思いをするなんてこともあるかもしれません。
脳の方は、若い時のようにパッパと記憶中枢からひっぱり出せなくなってきているかもしれませんが、「歳をとってきちゃって、なかなか思い出せなくて……」なんて言い訳をするようでは、サライ世代の沽券に関わる?
そんなことにならないように、動画を見ながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。
「脳トレ漢字」第124回は「宣旨」をご紹介します。古い文章や時代劇で見聞きしたことがあるのではないでしょうか。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』においては「承久の乱」にて、北条義時を追討する“宣旨”が描かれるでしょう。ドラマと合わせて、言葉の意味を確認しましょう。
この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「宣旨」はなんと読む?
「宣旨」という漢字、読み方に心当たりはありますか?「せんし」ではなく……
正解は……
「せんじ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「奈良・平安時代、天皇の意向を下達すること、また、朝廷の命令を下に伝えること」と説明されています。そして「平安時代以降、天皇の命を伝える文書」という意味も。
そもそも「宣」とは、律令官制で「上司が配下に口頭で命を下すこと」を指していました。そして、その宣の内容が「宣旨」でした。つまり、口頭による命令を受ける側が、記録のために作成したものが「宣旨」であり、それが変化し上記の意味となったとされます。
「宣旨」の漢字の由来とは?
「宣旨」を構成する漢字を見ていきましょう。「宣」は「述べる」の他に、「言う」の敬語「のたまう」「勅旨(=天皇の命令)を述べ伝えること」という意味を含意しています。そして「旨」もまた、単に「文章や話で述べようとしている内容」という意味に加えて、「君のおぼしめし、君の命令」という意味があるのです。それゆえに「勅“旨”(=天皇の命令)を“宣”べ伝える」と書いて「宣旨」となります。
ちなみに「旨」は「趣旨(しゅし)」や「本旨(ほんし)」など「し」と音読みすることがありますが、「宣旨」の場合は「じ」と濁ります。
「宣旨」が入った言葉「宣旨枡」とは?
「宣旨」という語が入った「宣旨枡(せんじます)」をご存知でしょうか? これは延久4年(1072)、後三条(ごさんじょう)天皇により定められた公定枡です。それまでは平安初期から多様な枡が使用されており、各地の量制は乱れていました。そこで後三条天皇は一定の基準となる枡を設けたのであり、これが鎌倉時代まで公的に使用されました。現行の枡の約6合7勺(約1.2リットル)にあたるとされます。
その名の通り「宣旨」により生まれた枡であり、「宣旨」の持つ影響力をうかがい知ることができます。
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いかがでしたか? 今回の「宣旨」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? ある言葉の起源や意味・用法などについての変遷を知ると、あまり馴染みのない語でも理解がぐっと深まるのではないでしょうか。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
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