古くは健康飲料として服用されていた茶。戦国時代に武将らと深い関わりを持った千利休の活躍により、精神性の高い芸術として隆盛した。

古くは健康飲料として服用されていた茶。戦国時代に武将らと深い関わりを持った千利休の活躍により、精神性の高い芸術として隆盛した。

「茶は薬」が日本人の常識

「脂肪を分解する」「血糖値や中性脂肪を抑える」など、特定保健用食品(トクホ)の「主力商品」のひとつが「お茶」。
日本人にとって古来なじみ深い飲料が、「健康にも良い」と科学的に証明されるようになったのは、ここ20年ほどのことだ。

古典には、頭痛を訴えた藤原道長が茶を一服喫しただけで、痛みがすっと和らいだということが記録されているなど当初は「茶は薬」という認識だった。時代は下って、鎌倉時代に臨済宗の開祖の栄西がその著書『喫茶養生記』で「茶は養生の仙薬であり、人の寿命を延ばす妙術を備えたものである」とまとめてからは、「茶は薬」が日本人の常識として浸透した。

羽柴秀吉と石田三成の出会いのきっかけ

お茶と日本人との関わりの歴史的な背景を踏まえると、羽柴秀吉と石田三成の出会いのきっかけとなった「お茶のエピソード」も違った見方ができそうだ。

羽柴秀吉が鷹狩りの途中、喉が渇いて近くの寺で茶を要求すると、寺の小僧がぬるめの茶を大きな器で出した。秀吉がもう一杯求めると、さきほどより少し小さい器で少し熱めの茶が出てきた。秀吉がさらにもう一杯求めると、今度は濃いめの熱い茶が小さい器で出てきたため、秀吉は感激して小僧を家来にしたという逸話である。この小僧が後の石田三成というわけだ。

大妻女子大学名誉教授の大森正司さんは、「三服の茶」をこう分析する。

「まずは喉の渇きをいやすため大服の茶を出したのでしょう。低い温度でも出るテアニンがリラックス効果を促します。運動して大量に酸素を取り込んだ体は酸化しやすい状態になりますが、熱い湯で抽出されるカテキンが体の抗酸化作用を促します。石田三成の茶の出し方は、じつに理にかなったものでした。秀吉は三成が出したお茶によって疲れが取れるのを実感したのでしょう」

大規模な疫学調査で、お茶に抗がん作用があることが示唆されるなど、近年、「茶と健康」は科学的に実証されつつある。専門家による研究も続けられているが、中世の人々はそのことを経験則として知っていたに違いない。

 

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