シミやしわ、肌荒れに肌のくすみ、年齢を重ねるごとに肌の悩みは増えていきます。ケアをしたほうがいいと思いながらも、忙しい日々のなかでなかなか手がつけられず、「もう年だから…」と諦めてしまっていませんか? 『老けない人が食べているもの』の著者である、医師・工藤あき先生は、「老ける人と老けない人の差は、遺伝やスキンケアの問題だけでなく、肌をつくる食事の内容にある」と言います。そこで、体の中から肌を変えていくインナーケアの大切さをご紹介します。
文/工藤あき(消化器内科医・美腸・美肌研究家)
あなたの肌も6週間で新品に
さて、いつまでも若々しくいるためには、食生活から見直すインナーケアが大切であることが、なんとなく実感できたでしょうか。ただ、からだのなかは目に見えないので、ピンとこないとしても無理はありません。
そこでここでは、あなたが食べたものがどうやってあなたの見た目にまで影響を及ぼすのかを知るために、肌のターンオーバーについて説明します。
突然ですがクイズです。できたら嫌な肌のシミ。このシミがだんだん薄くなって、やがて消えるのはどうしてでしょうか?
肌から色素が抜けていくから……というのもまちがいではありませんが、正確には「きれいな肌に入れ替わっているから」です。
肌が入れ替わっている? そんな実感はありませんよね。でも私たちの皮膚は、ほかの臓器と同じように細胞でできています。そして細胞は日々、古いものから新しいものへとつくり変えられる新陳代謝が行われています。
皮膚の組織をつくっている細胞の寿命は、年齢や個人差によって幅がありますが、約4~6週間。この新陳代謝の周期を「ターンオーバー(タイム)」といいます。ふだんはまったく意識することがありませんが、今の肌が細胞から新しく生まれ変わっているなんて、驚きですよね。今、あなたが見ているあなたの手や顔の肌も、1、2か月もすれば別物に変わっているんです。
肌の細胞は常に入れ替わっているから、シミも自然と消える。では、その仕組みがあるはずなのにシミが残ってしまうことがあるのは、どうしてでしょう?
答えは簡単で、ターンオーバーがうまくいかないからです。肌の新陳代謝が滞ってしまって、色素がいつまでも残ってしまうんですね。年を重ねるにつれてシミができやすくなる理由もここにあります。ターンオーバーの周期は、加齢に伴ってどんどん長くなっていくことがわかっています。そのため、シミだけでなく、くすみ、傷あとなども残りやすくなるのです。
新しい細胞の材料はあなたが食べたもの
では次に、どんなふうに細胞が入れ替わるのか、ターンオーバーの仕組みを見ていきましょう。皮膚の構造を細かく見ると、内側から「真皮」「基底層」「有棘層」「顆粒層」「角質層」と分かれています。新しい細胞がつくられるのは基底層の部分です。皮膚の製造工場といったところでしょうか。
基底層でつくられた皮膚の細胞は、有棘層、顆粒層へと押し上げられ、小さく分かれながら皮膚の表面に向かってどんどん移動します。そして最終的に角質層に到達すると、約2週間とどまって、はがれ落ちる。するとまた新しい細胞が運ばれてくる。このサイクルをくり返すのがターンオーバーです。
ちょっとむずかしい話になってしまいましたが、大事なのはここから。新しい皮膚の細胞をつくるための材料は、タンパク質などの栄養です。その栄養は、どこからやってくるのでしょうか?
そう、ふだんの食事ですね。食べたものが細胞になる、と聞くと「まあそうかな」と思えますが、具体的になにが起きているかはちょっと想像しにくいかもしれません。だって、赤いものを食べたからといって、からだが赤くなったりはしませんから。では私たちが食べたものは、どうやって細胞に変わるのでしょうか。次回ご紹介します。
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『老けない人が食べているもの』(工藤あき 著)
株式会社アスコム
工藤あき(くどう・あき)
消化器内科医・美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、腸内細菌・腸内フローラに精通。腸活× 菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。NHK「ひるまえほっと」などに出演。著書には『体が整う水曜日の漢方』( 大和書房)などがある。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化器病学会・日本肥満学会・日本高血圧学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本内科学会認定医。