シミやしわ、肌荒れに肌のくすみ、年齢を重ねるごとに肌の悩みは増えていきます。ケアをしたほうがいいと思いながらも、忙しい日々のなかでなかなか手がつけられず、「もう年だから……」と諦めてしまっていませんか? 『老けない人が食べているもの』の著者である、医師・工藤あき先生は、「老ける人と老けない人の差は、遺伝やスキンケアの問題だけでなく、肌をつくる食事の内容にある」と言います。そこで、体の中から肌を変えていくインナーケアの大切さをご紹介します。

文/工藤あき(消化器内科医・美腸・美肌研究家)

ホルモンバランスの乱れでむくみや肌荒れ

女性にとって身近な例を紹介します。女性ならば生理の前になるとなんだか顔がむくむ、肌荒れが気になる、などの悩みに思い当たる人も少なくないと思います。その原因はホルモンバランスの乱れです。

「PMS(月経前症候群)」という言葉が、かなり一般的に使われるようになりましたが、このとき女性ホルモンの作用で、むくみ、肌荒れやニキビの悪化などの症状が出ることがあるのです。
なぜでしょうか?

そもそも女性のからだでは、卵巣でつくられる「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という2種類のホルモンが交互に分泌されています。

卵胞ホルモンは、女性らしいからだをつくる、妊娠に備えて子宮の内膜を厚くする、血管や骨などの組織の健康をキープするなどの役割とともに、美肌のもとになるコラーゲンの産生を促す働きをしています。これに対して黄体ホルモンは、子宮内膜を妊娠しやすい状態に保つ、体温を維持する、食欲を増進させるなどの役割とともに、摂取した栄養や水分を体内にため込む作用があります。

血液中に含まれるホルモンの量はごくごくわずかな量なのですが、この2種類のホルモンが、初潮が始まってから閉経までの月経サイクルをコントロールし、初潮から妊娠、出産に関わっているのです。

毎月の生理と生理のちょうど中間くらいの時期に当たる排卵後から、生理が始まるまでの期間には、黄体ホルモンが分泌されます。黄体ホルモンには、男性ホルモンに近い働きがあります。ですから皮脂の量が増えて顔がギトギトしたり、毛穴がつまりやすくなったりして、ニキビができやすくなります。

また黄体ホルモンには、体内に水分をため込んで腸管のぜん動運動を抑える働きがあります。そのため生理前には便秘も起こりやすくなります。排卵とともに、卵巣から黄体ホルモンが分泌されると、その影響で水分がとられるため、腸内の水分が不足して便が硬くなってしまいます。そのうえ、便を直腸まで運ぶ腸管のぜん動運動が抑えられるので、生理の前は便秘に悩む人が増えるのです。それが肌にも悪影響を与えます。

女性の場合、更年期になると卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。すると体調にも変化が起こりやすくなるのですが、その影響をコントロールするのは、やはり食事です。たとえばエストロゲンに近い働きをする栄養素を積極的にとることで、症状が緩和することがあります。

ガサガサ肌は人気ダイエットのせい?

最近、糖質制限や炭水化物制限によるダイエットが、とても人気です。食品成分表の糖質量や炭水化物の量が多いと「あ……!」と思ってつい買うのをためらったりしますよね。糖質や炭水化物をとりすぎないことは、たしかに健康によい面もあります。

しかし一方で、過剰なダイエットによって肌荒れや便秘に悩む人も少なくありません。これは明らかに栄養のかたよりや栄養不足のサインです。

私の患者さんにも、やせたい一心で、とにかく“食べない”ダイエットを続けた結果、肌が荒れてガサガサになってしまった方がいました。せっかくやせても、かえって肌が気になったり、見た目が老けてしまったりしたら、ショックですよね。どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。

原因のひとつは食物繊維や水分の不足による、胃腸の不調です。糖質を制限しすぎると、水分が体内に保持しづらくなり不足します。また炭水化物を制限しすぎると、食物繊維と水分が十分にとれなくなります。これらは便秘を引き起こし、肌荒れのもとになります。

もうひとつの原因は栄養のかたよりです。美肌のもとであるタンパク質も、とりすぎには注意しなければなりません。必要以上のタンパク質は体内に吸収されず、そのまま腸内に運ばれて悪玉菌のえさになります。悪玉菌が増えると腸内環境が乱れて、やはりその影響が肌にも及ぶようになるのです。

結局、その患者さんはダイエットにも失敗し、リバウンドしてパンやお菓子などをドカ食いした結果、さらに頑固な便秘になってしまいました。こうなると、回復するまでにとても時間がかかります。

* * *

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工藤あき(くどう・あき)
消化器内科医・美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、腸内細菌・腸内フローラに精通。腸活× 菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。NHK「ひるまえほっと」などに出演。著書には『体が整う水曜日の漢方』( 大和書房)などがある。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化器病学会・日本肥満学会・日本高血圧学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本内科学会認定医。

 

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