ストレッチで硬くなったカラダをゆるめ、ほぐすことは、体調不良の改善、病気の予防に有効と説く、74歳現役医師・鎌田 實先生は、さまざまな体調の不具合を自ら考案したストレッチで改善し、現在も大好きなスキーを楽しむ体力を維持しています。そこで、鎌田 實先生の著書『開脚はできなくていい! カラダが10歳若返る 鎌田式ずぼらストレッチ』から、すぐに始められる簡単なストレッチをご紹介します。
文/鎌田 實
腰痛経験者も無理なくできる腰痛予防ストレッチ
実は僕も腰痛持ちです。MRIで調べてみると脊柱管狭窄症で、以前は諏訪中央病院の漢方医に鍼灸やマッサージをお願いしていました。ですが、腰痛ストレッ チをするようになって、脊柱管狭窄症が治ったわけではないけれど、痛みは起きなくなりました。ただし、腰痛を訴える方の中で、MRIで調べても脊柱管狭窄も椎間板ヘルニアも確認されない人が、おおよそ80〜85パーセントいると言われています。それらの腰痛症状を非特異的腰痛と呼ぶのですが、こりや疲れ、あるいは精神的な要素によって腰痛に苦しんでいる方が多くいることの証左です。
1つの原因として考えられるのは、S字状になっている背骨のカーブがきれいに保てなくなってしまうこと。歳をとるとどうしても筋肉量が落ち、柔軟性が低下していくために、S字を描く背中のカーブが直線的になってしまい、その影響が腰に出やすいと言われています。また、座っているデスクワークの時間が長いことも、 大きな原因と言えるでしょう。
僕自身も原稿を書く必要があって、座り仕事が多いので、1時間に一度は必ず骨盤から腰をひねるストレッチをしています。その際に気をつけるのは、呼吸を止めないこと。筋肉に酸素を送り込むような感覚を持ってストレッチをすると、伸ばしている筋肉に意識が向きます。立って腰を回転させるストレッチも同様に有効ですから、たとえ仕事中であったとしても、1時間に一度は休んで、腰のケアをしてください。
ストレッチは、伸ばすだけでなく、ゆるめることも大切です。直接、腰周りをストレッチするだけでなく、太ももの裏側の筋肉、ハムストリングスも伸ばしましょう。太もも裏が硬く突っ張ると、前かがみの姿勢が取りづらくなって、腰痛を起こす原因になってしまいます。
腰痛予防(1)座り仕事での腰の疲れを解消し、腰痛予防に
腰椎ひねり(1セット 左30回、右30回)
《ポイント》
・下半身からひねるイメージで行う。
・広背筋・脊柱起立筋・腹斜筋などのインナーマッスルのストレッチができる
・デスクワークの合間などに最適
1.イスに座った状態で始める。
2.片方の手を体に巻くようにし て、下半身は前を向いたまま、 腰周りから上半身を後ろのほ うにひねる。顔も自然に後ろ を向く。
3.30 秒キープしたら、前に戻す。
4.今度は反対に腰周りから上半身をひねる。30秒キープする。
腰痛予防(2)イスに座ったまま無理せず手軽で気持ちいい
無理をしない前屈(1セット 10秒×3回)
《ポイント》
・180度開脚前屈は決して目指さなくていい。
・立った状態での前屈は高齢者には負荷が強いので、イスに座った状態で無理せず行いたい。
1.イスに座った状態で行う。鼻から息を吸う。
2.息を吐きながら、ゆっくり上体を倒して、可能なら床に手をつく(無理につかなくてもよい)。腰から背中が伸びているのを意識し、10 秒キープ。
3.息を吸いながら上体を起こす。
立った状態で無理に床に手をつこうとしない。
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『開脚はできなくていい!カラダが10歳若返る 鎌田式ずぼらストレッチ』(鎌田 實 著)
宝島社
鎌田 實(かまた・みのる)
東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり、赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作る。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金理事長、JIM-NET代表、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員ほか。ベストセラー『がんばらない』、『70歳、医師の僕がたどり着いた 鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(ともに集英社)ほか、著書多数。