ストレッチで硬くなったカラダをゆるめ、ほぐすことは、体調不良の改善や病気の予防に有効と説く、74歳現役医師・鎌田 實先生は、さまざまな体調の不具合を自ら考案したストレッチで改善し、現在も大好きなスキーを楽しむ体力を維持しています。そこで、鎌田 實先生の著書『開脚はできなくていい! カラダが10歳若返る 鎌田式ずぼらストレッチ』から、すぐに始められる簡単なストレッチをご紹介します。
文/鎌田 實
腹式呼吸とグー・パー運動で不眠症対策を
内科外来をしていて、ここ数年、眠れなくなったという方が増えてきています。 コロナに感染することへの不安や緊張が常にあり、しかも友人たちと気軽に会えないため、ストレスを解消できずに溜め込んでしまっている。さらにはステイホームで運動不足になってしまう。
眠れない主な原因
眠れない原因は、以下のような原因が考えられます。
1.不安緊張
2.運動不足
3.生活リズムの乱れ
ストレッチは、この3つの原因を解消するのにとても有効です。睡眠のおよそ2時間前にその日の疲れを取るようなストレッチをし、1時間ほど前に風呂に入って、布団の中では両手両足のグー・パー運動(※)と腹式呼吸をするとよいでしょう。
睡眠のコツは、一度体温を上げて、その下がり始めで入眠することです。ストレッチで運動をしながら体をほぐし、風呂に入って深部体温を上げ、仕上げに布団の中で寝っ転がりながらグー・パー運動をして手足を温める。血流がよくなって体温が少し上がったところで、腹式呼吸をして副交感神経を刺激して、体温が落ち着いてきたところで入眠する。これら一連の流れを習慣化して繰り返していると、まるで儀式のように、不思議と眠れるようになります。
20 時以降のスマートフォンやPCは見ないと決めて、ストレッチをしながら眠るための体を整えていく。特に眠り始めの3時間ほどの間に、成長ホルモンが分泌されます。若々しい肌を保つためには、最初の3時間を大切にしましょう。
もう一つ睡眠中の夜中の3時頃に分泌されるのが、コルチゾールというホルモンです。糖と脂肪から生成されるグリコーゲンを使ってエネルギー代謝を促進し、血糖値を安定させてくれます。つまり、よい眠りによって、寝ながらにしてメタボ対策ができるのです。よい眠りが健康を生み、健康がよい睡眠へと誘います。
僕は18歳の大学受験の頃から65歳まで、4時間半のショートスリーパーでした。 104歳まで生きた日野原重明先生も同じだとおっしゃっていました。浅い眠り のレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠が約1時間半のサイクルで回るので、そのリズムに合わせて、自分がもっとも体調のよい睡眠時間を選ぶのが大切です。
※手足のグー・パー運動
両方の手にそれぞれボールを持っているイメージで、拳を握る。その状態を10秒キープ。10秒たったら両指を広げる。両足も同様にグー・バーするように意識する。
『開脚はできなくていい!カラダが10歳若返る 鎌田式ずぼらストレッチ』(鎌田 實 著)
宝島社
鎌田 實(かまた・みのる)
東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり、赤字病院を再生。地域包括ケアの先駆けを作る。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、諏訪中央病院名誉院長、日本チェルノブイリ連帯基金理事長、JIM-NET代表、地域包括ケア研究所所長、風に立つライオン基金評議員ほか。ベストセラー『がんばらない』、『70歳、医師の僕がたどり着いた 鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(ともに集英社)ほか、著書多数。