文/印南敦史

「体にいい」といわれる食品や食材は積極的に試してみるものの、なぜだか心も体も満たされない――。

そんな思いを抱いている方は、決して少なくないはずだ。なにしろテレビや雑誌、インターネットなどを通じてさまざまな情報が次々と飛び込んでくるのだから、仕方がないことなのかもしれない。

だが管理栄養士である『続食べ 結果が出る食べ方がカンタンに続く方法』(岸村康代 著、かんき出版)の著者は、そうした情報よりも大切にすべきことがあるのだと強調する。

「“なにを”食べるか」よりも「“どう”食べるか」が重要であり、どんな食材でも食べ方によっては毒にも薬にもなるというのだ。当然の話ではあるのだが、テレビやネットの情報が氾濫する日常に身を置いていると、つい忘れがちになってしまうのも事実ではないだろうか。

そこで本書では「どう食べるか」に目を向け、それをしっかり続けるための方法を伝えているわけである。つまり、「続食べ(つづたべ)」という変わったタイトルにも、そのような思いが込められているのだ。

続食べとは、これまで何をやっても続かなかった人でも、続けられる方法。言い換えると、続かない食べ方が続く食べ方に変わる方法。「続かない食べ方」が「続く」=「結果が出る」のです。(本書「はじめに」より)

興味深いのは、「習慣」についての考え方だ。正しい食べ方を続けるのは難しそうにも思えるが、結局は「3日だけ続けよう」のほうが続くというのである。

ガマンして一生続けようとするから続かないのであって、逆に「3日だけ続けよう」と思って本気で取り組むと、意外にも体調がよかったり少し体重が落ちてカラダが軽くなったりして、「これなら続きそう!」となって結果的に続くのです。(本書58ページより)

“三日坊主”は否定的に捉えられがちだが、実際のところ問題はないらしい。逆に3日やってみて「これは無理そう」「なんとなく調子が悪い」と感じたのであれば、それ以上無理に続けず、別のことを試してみればいいのだ。

多くのクライアントと向き合ってきた著者は、一番つらいのは1日目で、それを乗り越えることが大切なのだと主張する。1日目を越えれば体からはつらさが減り自信がついてくるため、以後、2日目、3日目と続けやすくなるのだと。

知識としてそれを知っておくことが1日目を乗り越える糧になり、結果的には「一生続けなければいけないのか……」というような精神的重圧から逃れることができるわけだ。

たしかに、「三日坊主はよくない」「3日やったくらいでなにが変わるのか」などと感じても不思議はない。しかし長年の食生活を変えるにあたっては、「3日だけ」という気楽さが気持ちのハードルを下げてくれるようなのだ。そうすれば自然に、「やってみようかな」と思えるようになるからである。

それだけで「なんとなく調子がいい」と感じられるようになるのなら、試してみる価値はあるかもしれない。

しかし無理に我慢すると、次の食事で食欲が爆発したりすることもあるもの。したがって、そうなることを避けてしまいがちだが、意外や「食べ方は我慢してはいけない」と著者はいう。ただし、自由すぎてもいけないのだと。

有効なのは、適切な満足ポイントを食事ごとに感じるまで、自分の心と体を満足させることなのだ。

適切な満足ポイントとは、正しいシグナルを送れるようになったカラダが「満足したかも」と思えるポイント。
ではその正しいシグナルは、どうすると送れるようになるか。その答えが、最初の3日間で正しい食習慣が身についた状態にすることなのです。(本書62ページより)

最初の3日間を乗り越えれば、体が勝手に体にいいものを察知してくれたり、正常にシグナルを送ってくれたりするようになる。大切なのは途中で諦めないことで、もうひとつの成功のカギが「環境づくり」だ。

たとえば「朝にランニングしよう」と思って寝たものの、翌朝なかなか起きられず、気がつけばランニングする時間がなくなっていたというようなことがある。そのため、ついつい「明日から」となってしまったりするわけだ。

しかし、とりあえず起きてランニングウェアを着てみると、なんとなく「ランニングしなければいけない雰囲気」になり、ハードルが少し下がったりもする。

そんなふうに環境を変え、行動へのハードルを下げたりしてみることが大切なのである。

「食べたい食べたい」と思っていても、すぐ手を伸ばせば届く場所にあるお菓子と、わざわざ外着に着替えてスーパーやコンビニまで出掛けて買わなければいけないお菓子とでは、どちらがハードルが高いか。当たり前のようですが、そのハードルを上手に活用して環境を整えることで、成功率がぐんと上がるのです。(本書64ページより)

成功の秘訣は、意外と身近なところにありそうだ。


『続食べ 結果が出る食べ方がカンタンに続く方法』
岸村康代 著
かんき出版

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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