食後の血糖値が急激に上がりにくい食事「低GI食」は、ダイエットにいいと注目されてきました。しかし、最新の研究では、低GI食を摂ることは「継続的な集中力や記憶力アップにつながる」ということがわかってきました。そこで、脳科学者・西 剛志先生の著書『脳科学者が教える集中力と記憶力を上げる低GI食 脳にいい最強の食事術』から、仕事や勉強の効率を上げる食事術をご紹介します。

文/西 剛志

糖質不足で血糖値が下がると、脳はアドレナリンを出す

糖質を摂りすぎるとよくないのであれば、逆にまったく糖質を摂らないとどうなるのでしょうか? 糖質が不足すると、幸福度が下がります。例えば、皆さんは、おなかが空いてイライラしたことはありませんか?

実は、私たちの脳は糖質不足で血糖値が下がりすぎると、脳はアドレナリン(闘争ホルモン)を分泌します。すると、気づかないうちに攻撃的になり、イライラしてしまうのです。その結果、どうしても集中しにくい状態になってしまいます。

空腹が満たされると、ほっとしたり心が落ち着いたりすることがあります。栄養が満たされると、アドレナリンの分泌が止まり穏やかになります。また、気持ちが穏やかになるのは、脳内で、幸せホルモンといわれる「セロトニン」という物質がつくられているからです。そのお手伝いをするのがブドウ糖です。

セロトニンの材料は、タンパク質に含まれるトリプトファンというアミノ酸で、肉や魚などのタンパク質に大量に含まれています。しかし肉や魚を摂ったからといって、トリプトファンが脳内に運ばれるわけではありません。トリプトファンを脳にしっかり届けるには、糖質を同時に摂ることが大事になってきます。

なぜなら、糖質を摂るとインスリンが分泌され、下の図のように、トリプトファンを脳に輸送することができるからです。

出典:『脳科学者が教える集中力と記憶力を上げる低GI食 脳にいい最強の食事術』

つまり、肉や魚だけ食べてもセロトニンはできません。一緒に糖質を摂らなければ、セロトニンはできないのです

不安を感じやすくなったり、ネガティブな感情を抑えられなくなったりするのは、普段、糖質不足でセロトニンが少ないことが原因かもしれません。脳が気持ちよく動いてくれないと、悪いことや間違っていると頭でわかっていても、抑えられなくなったりします。

例えば、太るとわかっているのに食べてしまう、お金が底をついているのにギャンブルをする、必要がないものを買ってしまう、病気の感染リスクが高いとわかっているのにパーティーに参加する……。最悪の場合は、怒りを抑えられなくなって、人を傷つけてしまうこともあります。

実際、補導された非行少年の90%が低血糖(血液中のブドウ糖が不足している状態)だったというデータもあります。平常心を保って生活をするためにも、糖質は欠かせないのです。

低GIと高GIの見分け方

GI値とは、食後の血糖値の上昇度を表す指数です。100に近いほど血糖値が急激に上昇し、低いほど血糖値の上昇がゆるやかになります

1981年に、カナダのトロント大学のジェンキンス博士らが、同じ糖質量でも食品によって血糖値の上がり方に違いがあることを発見し、提唱しました。このGI値を利用して「血糖値スパイク」を起こさないように脳に糖質を安定供給し、脳がベストパフォーマンスを発揮できるようにするのが、「低GI食」です。

今日は1日パフォーマンスを上げたいというとき、どのようにGI値の高い食品と低い食品を見分ければよいのでしょうか。ポイントは3つ。

低GIと高GIを見分けるポイント

  • 甘すぎるものは要注意
  • 炭水化物は、白い食べ物より黒い食べ物を選ぶ
  • 食物繊維が多いものを選ぶ

これがおおよその見分ける基本になります。甘さは、そのほとんどがブドウ糖に起因しています。当たり前ですが、あまりにも甘いものを食べると、血糖値が急上昇します。砂糖をそのまま原料に使ったお菓子、甘すぎる果物も、それだけたくさんの糖質を含んでいるということになります。

スーパーなどで「糖度〇度」といった広告やチラシを見たことがあるかもしれませんが、糖度とは糖質がどれだけ含まれているかを表す数値です。15度なら、100g 中に15g の糖質が含まれています。
 
2つ目のポイントは「炭水化物は、白い食べ物より黒い食べ物」を選ぶこと。炭水化物は三大栄養素の1つで、さまざまな食品に含まれています。なかでもたくさん含まれているのが、米やパン、そしてうどん、パスタといった麺類などの穀類。私たちが日常、主食として食べているものです。炭水化物は糖質と食物繊維で構成されていますが、そのほとんどが糖質です。

しかし、含まれている糖質の量が食べ物の色によって異なるのです。例えば、お米なら白米よりも茶色の玄米、白い食パンより茶色のライ麦パン、うどんよりそばのほうがGI値は低くなります。精製されていない色のついた炭水化物は糖の消化吸収をゆるやかにしてくれる食物繊維を多く含むため、血糖値の上昇をゆるやかにしてくれるのです。砂糖も、精製された上白糖より、黒砂糖のほうがGI値は低くなります。

3つ目のポイントは、白米と玄米の違いのように、その食品に食物繊維がどれだけ含まれているか。

糖質がたくさん含まれている果物も、食物繊維が豊富な、例えばりんごやいちごなどは、食物繊維が少ないメロンやスイカよりもGI値が低くなります。GI値の面でみると、フルーツジュースや果物ジャムは糖質が高くなります。使用されているのが果汁のみになると、食物繊維が失われた食品になるからです。食物繊維が豊富とされる野菜の中では、でんぷん質を多く含むじゃがいもや里いもなどのいも類は高GI食品になります。

低GI食品がどんなものか、なんとなくわかっていただけたでしょうか?

もちろん、高GI食品も食べてよいですが、仕事や学習などここぞというときは、低GI食品をうまく使うことが大切です。例えば、肉や魚、乳製品などは糖質がそれほど含まれない低GI食品。積極的に摂りたい食べ物です。ただし、低GI食品だからといって、いくらでも食べていいというわけではないので食べすぎには十分気をつけてください。

* * *

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西剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。T&Rセルフイメージデザイン代表。LCA教育研究所顧問。1975年、宮崎県高千穂生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、知的財産研究所に入所。2003年に特許庁に入庁。大学院非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内物質など最先端の仕事を手掛ける。その後、自身の夢をかなえてきたプロセスが心理学と脳科学の原理に基づくことに気づき、2008年に世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウを企業や個人向けに提供する会社を設立。現在は脳科学を生かした子育ての研究も行い、大人から子どもまで、才能を伸ばす個人向けサービスから、幼稚園・保育所の先生、保育士、保護者向けの講演会、分析サービスなどで10000名以上をサポート。横浜を拠点として、全国に活動を広げている。著作に『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)などがある。

 

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