文/印南敦史

コロナの影響で“家飲み”がすっかり浸透したが、そのぶん、「つい飲みすぎてしまう」という方も多いのではないだろうか?  恥ずかしながら私も同じで、少し前まではビールからワインへと、無自覚のままつい飲み続けてしまうというようなことも少なくなかった。

しかし、あるとき、そのコースに(なんとなく)炭酸水を加えてみたところ、意外なことに酒量が減った。まずは350mlの缶ビールを1本、そしてワインを1、2杯飲んだら、以後は炭酸水に切り替えるようにしたのである。その結果、いまでは飲みすぎることがほとんどなくなっている。当然ながら、二日酔いに悩まされることもない。

それはひとつの例にすぎないが、管理栄養士である『飲み方、使い方をちょっと変えるだけ 炭酸水 最強の活用法』(新生 暁子 著、アスコム)の著者も、炭酸水の効能には大きな期待を寄せているようである。

国内外の資料に目を通して学術的に調べた結果、炭酸水や炭酸そのものが体に及ぼす影響や効果に着目した論文が多数発表されていることを知ったというのである。また、医学的見地からも炭酸についての関心の高さがわかったのだそうだ。

なかでもヨーロッパでは、天然の炭酸泉(二酸化炭素泉)が豊富なため、古くから医学的な治療に用いられています。
炭酸泉に含まれる炭酸ガスが皮膚から体内に浸透し、毛細血管内に入り込むことで、毛細血管が広がり血流を活発にします。そうした作用から、特に循環器系疾患において動脈硬化や心臓病の治療やリハビリにも積極的に活用されています。(本書「はじめに」より)

ちなみに炭酸水には「飲料水」というイメージが強いが、ポテンシャルはそこだけにとどまらない。美容や料理などの領域においても驚くべきパワーを発揮してくれるというのだ。しかし、なかでも特に注目したいのは、やはり健康面への効果だ。

たとえば著者は、日常生活でストレスを感じたときにも炭酸水にはメリットがあると説いている。気持ちが弱っていると感じたとき、仕事中にほっとしたいとき、気持ちを落ち着けたいときなどには、コップ1杯の炭酸水を飲むといいということだ。

たしかに炭酸水を飲めば、炭酸が口のなかに広がって気分もスッキリするものだ。シンプルな、当たり前なことのようにも思えるが、そこには根拠があるようなのだ。

この気分スッキリの理由は、炭酸ガスには自律神経のなかの副交感神経を優位にしてリラックスさせてくれる作用があるからです。
副交感神経というのは、寝ているときやリラックスしているときに働く神経のこと。ですから、副交感神経が優位にあるということは、体が休んでいる状態ともいえるのです。(本書71ページより)

ましてや糖分もカフェインもゼロなので、ダイエット中でも安心して飲むことが可能。前述したように飲みすぎの抑制にもなるので、利用しない手はないのだ。

ただし応用範囲も広いだけに、日常生活に炭酸水を取り入れるようになれば消費量も増えていくことになる。買い置きしていた炭酸水が切れることもあるだろうし、そもそもいつも購入していれば費用もかさみ、ペットボトルのゴミも増えていく。

そこで考えたいのが、自宅で炭酸水をつくることだ。本書でも、2つの方法が紹介されている。

まず最初は、重曹とクエン酸でつくる方法。1gずつの重曹とクエン酸をコップに入れ、200mlの水を注いで混ぜるだけだというのだからとても簡単。重曹もクエン酸もスーパーやドラッグストア、インターネットなどで500円くらい(500g)で手に入るので、ぜひとも試してみたいところだ。

そしてもうひとつは、すでに浸透している感もある「炭酸水マシン」を利用する方法。マシンに専用のガスシリンダーを装着し、水を入れたボトルに直接ガスを注入すれば、すぐに炭酸水ができあがる。

炭酸の強さを調節できるマシンもあり、価格は1万〜3万円程度。1杯(500ml)あたり十数円程度で炭酸水をつくれるというので、経済的でもある。

また炭酸マシンには、シリンダー式とは別にカートリッジ式も存在する。シリンダー式の場合は、メーカー指定業者にガスシリンダーを回収してもらわなければならないというデメリットがあるが、カートリッジは使い捨て。本体もシリンダー式よりコンパクトなので、キャンプなど外出先での使用にも適している。シリンダー式のよりもやや割高ではあるが、選択肢に加えてもいいかもしれない。

料理だけでなく、美容や健康などのために大量に炭酸水を使うなら重曹+クエン酸にしたり、多少コストがかかっても手軽に楽しみたいならカートリッジ式の炭酸水マシンにしたりと、自分が炭酸水を使用する頻度や使うシーンを考えて使い分けてもいいと思います。(本書74ページより)

いずれにしても本書を読む限り、なにげなく飲んでいる炭酸水には思っていた以上のメリットがあるようだ。単に飲料としての炭酸水だけではなく、「炭酸浴」の効能やダイエット効果なども紹介されているので、参考にしてみる価値は充分にありそうだ。

『飲み方、使い方をちょっと変えるだけ 炭酸水 最強の活用法』

新生 暁子 著
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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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